30年後を想像すると、町にあるオフラインの広告スペースはほとんどがデジタルサイネージや有機ELに置き換わり、今の看板は姿を消している可能性が高い。ですが、既存の看板はなくなっても、リアルの世界には形を変えて広告はあり続けるでしょう。であれば、リアルの世界の広告を計測するビジネスが、この世界のイノベーションだと考えたわけです。

既存事業が“資本”になる強み

――伝統企業が新産業に挑戦する際に、成功させるコツはありますか。

スタートアップと伝統企業のROE比較 画像提供:クレスト 拡大画像表示

 既存事業を再成長させているので、その利益を再投資に使えることは強い。自社で成長するための資金を生み出すことができるのですから、自社株を売って資金調達するスタートアップにはできない技です。現状の売り上げから少し削って投資できるということは、諦めずに続ける限り、永遠に挑戦し続けられるということです。
 
 今のモデルに至るまでに開発段階で3回失敗しているんですが、既存事業で収益はあるので粘り強く試行錯誤をしていきました。とにかく、諦めないことが重要です。

――結果は、どうなりましたか。

 おかげさまで、グループ傘下のライフスタイルショップ「インナチュラル」では、当たり前のようにウィンドウディスプレイで顧客データを測定できるようになりました。大手アパレル企業にも続々と導入されています。

 リアル店舗の顧客の行動を測定できるカメラを開発している競合他社はほかにも20社ほどありますが、どれもベンチャーで、ファンドやベンチャーキャピタルから出資を受けて成立している企業です。私たちは前述した既存事業の収益があるため、他社よりも圧倒的に安価で売ることができるというのも強みです。

内側から変える「レガシー市場」

――入社から10年来の改革で、どのくらい会社は成長しましたか。

 買収した企業を含んだホールディングス全体で、売り上げは4.5倍になりました。クレスト単体でも、およそ3倍です。もちろん後半は、新規事業のために投資していますから、これからもっと大きくできると思っています。

――最終的なゴールはどこに見据えていますか。

 私たちの企業理念は、「レガシー・マーケット・イノベーション」であり、レガシー産業とは看板事業だけではありません。実際に今日まで、木材屋やライフスタイルショップなどをM&Aしてきました。

 まだ花形産業に破壊されておらず、イノベーションを起こせるはずなのに、できていないレガシー産業がたくさんあるはず。それぞれのインダストリーで内側からイノベーションを起こし、最終的に第四次産業革命の一翼を担っていきたいです。