【WSJ3分解説】「トランプ弾劾調査」でほくそ笑むのは誰?ホワイトハウスが9月25日に公表した、「ウクライナ疑惑」に関する電話会談の記録 Photo:Alex Wong/gettyimages

米国史上3回しか行われていない
弾劾調査に至った「ウクライナ疑惑」

 9月24日、米国で歴史的な発表がありました。ナンシー・ペロシ米下院議長(民主党)が、ドナルド・トランプ大統領に対する正式な弾劾調査を指示したと表明したのです。

 ざっくりといえば、トランプ氏が大統領解任に値するような国民への重大な裏切り行為を働いていないかについて調査を始めるということです。

 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」が次の記事でそのことを伝えています。

●「ウォール・ストリート・ジャーナル」より
>>トランプ大統領の弾劾審問、下院議長が正式に発表へ

 「これから調査を開始する」という話なので、仮にトランプ氏が解任されることになるとしても、間に何ステップも挟んだ先の話になります。しかし、ビッグニュースであることには変わりません。何せ米国の歴史においてわずか3回しか行われておらず、実施すること自体が異例のことというのが、大統領に対する弾劾調査なのです。

 その「罪状」ですが、「トランプ氏がウクライナ向けの支援金を保留する一方で、大統領選の民主党候補ジョー・バイデン前副大統領の息子に関する調査を行うよう同国政府に圧力を掛けた」(WSJ)というものです。

 ただ、これだけ聞いてもよく分からない人も多いと思います。このニュースは登場人物が多く、そのそれぞれの思惑が複雑に絡み合っています。そこで、最初に今回の出来事の構図を整理したいと思います。

一連のニュースの背景にあるのは
2020年の米大統領選挙

 まず押さえておきたいのは、2020年に行われる米大統領選挙を巡るストーリーの中で発生した重大ニュースということです。トランプ氏や共和党陣営には、大統領再選を果たしたいという強い動機があり、野党である民主党には当然それを阻止したいという同じくらい強い動機があります。

 その中で事の発端となったのは、トランプ氏が7月25日に行ったウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談に関する内部告発でした。これをきっかけに今回の「ウクライナ疑惑」の構図が浮き彫りになっていきます。

 疑惑の中身は、20年大統領選における民主党の有力候補であるジョー・バイデン前副大統領(民主党)にダメージを与えようと、トランプ氏がウクライナの大統領に対して調査を依頼したというものです。

 さらに、その電話会談の1週間ほど前にトランプ氏は「3億9100万ドルの対ウクライナ支援を保留するよう首席補佐官代行に要請していた」(WSJ)といいます。

 となると、トランプ氏が要求する調査をしなければ、ウクライナに対する米国の支援はストップしたままだという圧力以外の何物でもないと、ウクライナ側には映るでしょう。そして、大統領選で自らが勝つための「ディール」を外交の中で持ち掛けたとなれば、国民に対する重大な裏切り行為だと糾弾されてもおかしくありません。