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従業員の健康維持と生産性向上を目的に、豪華な社員食堂やジムを提供する企業が増えている。だが、こうしたウェルネス・プログラムのほとんどは目立った効果を上げていない。従業員がオフィスに求めているのはもっとシンプルな条件、すなわち空気の質がよく、自然光が入ることだからだ。企業はそうしたニーズを理解して、3つのことを実施すべきである。


 従業員の健康と生産性を促進するために、米国の雇用主がウェルネス・プログラムに投じる金額は、2019年には平均で360万ドルに上ると推計されている。社内ジム、立ったまま仕事ができるスタンディングデスク、瞑想室、看護師へのホットラインなどは、企業が投資している福利厚生のごく一部である。

 だが、これらの中で、効果を生んでいるものはあるのだろうか。

 ハーバード大学が最近行った調査によると、米国大手企業の8割が提供するウェルネス・プログラムは、目立った効果を上げていないという。これは我々の調査結果とも一致する。当社フューチャー・ワークプレイスビューは先頃、北米の従業員1601人を対象にアンケート調査を実施し、健康増進のための特典のうちどれが最も重要なのか、それらが生産性にどう影響を及ぼすのかを探った。

 すると、意外な結果が判明した。従業員にとって最優先の要望は、基本的な事項だったのだ。すなわち、空気の質が良好であること、自然光が入ること、作業スペースをパーソナライズ(自分好みにカスタマイズ)できることである。

 空気の質が悪いと日中に眠くなる、と答えた回答者は半数を占め、うち3割以上が、そのせいで最大1時間分の生産性の損失につながるとした。実際、従業員のパフォーマンス、満足度、ウェルビーイングに最も強く影響を及ぼしていたのは、空気の質と採光であった。一方でフィットネス施設と、テクノロジーを活用した健康ツールは最も影響が少なかった。

 企業はこれらの部分を改善できるはずであり、雇用主と従業員双方のために改善する必要がある。質の高い職場、つまり自然光が入り、空調がよく、快適な温度が保たれた環境では、年間最大4日の常習欠勤の削減につながる。予定外の常習欠勤による企業の損失は、時給労働者一人当たり年間3600ドル、給与所得者の場合は年間2650ドルと推計されており、収益に大きな影響を及ぼしうるのだ。

 他の研究結果を見ても、職場環境に満足している従業員は生産性が16%高く、定着率も18%高く、競合他社よりも自社に魅力を感じる度合いが30%高い。我々の調査では回答者の3人に2人が、従業員の健康とウェルビーイングを重視する職場から就職をオファーされたら受け入れたい、またはそのような職場での仕事を続けたい、としている。

 つまり、職場のウェルネスに関して従業員中心の視点を取り入れる意思がある企業は、自社の生産性を向上させるだけでなく、人材を惹きつけて保持する能力も高めることになるのだ。

 職場の環境と従業員のウェルビーイングを向上させるために、雇用主が最初にできることは次の3つである。