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米国財界ロビー団体のビジネス・ラウンドテーブルが「企業の目的に関する声明」で株主資本主義との決別を宣言したことに代表されるように、いま資本主義、ひいては大企業や政府に対する信頼が大きく低下している。ビジネススクールはこれまで、資本主義の根幹を支える人材を数多く輩出してきたが、自分たちの存在意義を問い直し、既存のルールをつくり直せるリーダーの育成に力を入れるべきである。


 資本主義と大企業への信頼が低下している。最近の調査では、大企業を「大いに」または「極めて」信頼していると答えた米国人は、わずか25%だった。また、50%が、大企業が社会に影響を持ちすぎていると答えた。

この傾向は、特に若者の間で顕著である。18~29歳を対象にした2018年の調査では、資本主義を肯定的に見ている若者は半分以下だった。最近では、どうやら「時代精神に起きていることに反応して」、大企業の経営者約200人が、「株主価値」の最大化だけでなく、すべてのステークホルダーの利益を考えることを誓った。

 こうした信頼低下に対して、これまでスタンフォード大学を含むほとんどのビジネススクールは、倫理や社会起業家精神、インパクト投資、慈善活動に関するプログラムや科目を増やすことで対応してきた。そこには、社会問題に対して、民間部門がよりよい解決策を提示すべきだというメッセージがあった。

 だが、このやり方に効果はないだろう。ビジネススクール(とりわけ米国のビジネススクール)は、みずからを市場資本主義の中心に据えて、世界経済の実績を決定するマネジメントとバリュエーションのテクニックを教えてきた。資本主義への信頼回復を助けたいなら、ビジネススクールは民間部門を超えて、政府が資本主義システムを機能させるうえで果たす役割を認める必要がある。

 これは「市民マインドのリーダーシップ」を受け入れることを意味する。個人と企業と政府の相互作用に関する総合的な理解にもとづき、企業活動と市民活動を実践する方法だ。そこで重視されるのは、よい統治メカニズムの重要性であり、資本主義と市場経済が、その約束を果たせるシステムをつくることだ。

 アメリカ合衆国建国の父ジェームズ・マディソンは、合衆国憲法の批准を推進するために書いた論文集『ザ・フェデラリスト』の第51編で、「人間が天使でもあるというならば、政府などもとより必要としないであろう」と書いている。

 資本主義がその役割を果たすためには、イノベーションと市場を動かし、競争を確保し、社会問題に対処するためのルールをつくる、正しく機能する政府が必要だ。市民マインドのリーダーシップは、政府の役割を認め、官民両方で信頼できる機構をつくる努力をする。また、市民の関与を奨励し、あらゆる領域のリーダーが従うべき、新しい、よりよい規範を推進する。