平成24年(2012年)版の情報通信白書が公表された。政府が発表する白書というと、何やら難解な書物を想像するかもしれないが、特に近年は「読み物」としても楽しめる内容となっている。少なくとも本連載を定期的にお読みいただいているような方であれば、ぜひ一読をおすすめする。

 もちろん、データブックとしても充実している。政府が発表する公式な文書でもあるだけに、責任は重大だし、それだけに正確性も高い。実は私も前職時代に、白書の編纂をお手伝いしたことがあるのだが、いまでも思い出すくらいしんどい作業の連続であり、そしてその経験が現在の私の血肉にもなっている。

 まだ一昨日(7月17日)に公表されたばかりでもあり、私もまだ精読はできていない。しかし通信業界で仕事をする人間として、まずはざっと目を通さねばと思い、パラパラとめくっていて、おもしろいデータや分析を見つけた。そのいくつかをご紹介したい。

生き残るサービス、
生き残れないサービス

 ひとつは、フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)からスマートフォンへの移行に伴う、利用サイトの変化だ。どういった分析で、どのような結果が示されているのか。まずは白書の本文を引いてみよう(改行は筆者による)。

『現スマートフォン利用者に対し、上記の8サービス項目について、スマートフォンへの移行前後でどのように利用サイトが変化したかを質問した。

 その結果を基に、利用率と上位3サービス(プラットフォーム)の集中度(HHI)をみると、動画配信・音楽配信・検索については、利用率・集中度ともに大きく拡大していることがわかる。特に音楽配信については、iPhoneユーザーのiTunesへの移行の影響が大きく、エコシステム構築の戦略が奏功していることがうかがえる。

 他方、電子商取引、SNS、オンラインゲームは、利用率は拡大しつつ、集中度は横ばいないし低下傾向にあり、フィーチャーフォンでの状況より競争が活性化していることがうかがえる。』

 たとえば、「何か検索したいと思った時、利用する検索サイトが、フィーチャーフォンとスマートフォンでどう変化した/しなかったか?」という調査である。これを、検索サービス、SNSサービス、音楽配信サービス、オンラインゲーム、オンラインショッピング、動画配信サービス、電子書籍サービス、電子新聞サービスの8分野で、それぞれ調べた。