かつて野田首相が言った通り
「財源にはシロアリがたかる」

 本コラムでも取り上げたことがあるが、YouTubeにアップされている、前回の総選挙当時に野田佳彦首相が行なった有名な街頭演説の中に、(主として)官僚機構をシロアリに譬えて、財政支出のムダの削減を「増税よりも先に」行なうことの重要性を語ったくだりがあった。

 社会保障に関して、自説のほとんどを捨てて自公両党に譲り、マニフェストでは行なわないことになっていた消費税率の引き上げを、党を割ってでも実行しようとした昨今の民主党政権の様子を見ると、「ムダの削減が先だ」という主張ははるか昔のことのように思える。

 しかし、これは、財政再建のための重要度の第一番目は歳出の削減であって(7割はこれであるべきだ、という説をよく聞く)、増税は第二番目だ、というセオリーに合致する正論だ。言った人が野田氏であっても、正論は正論である。

「財政再建に着手しないとギリシャのようになる」と脅す一方で、消費税率引き上げに向けた動きと平行して、たとえばコスト対ベネフィットの点で大いに疑問のある新幹線の残り路線に着手しようとするような政府の動きを見ていると、「財源」を先に見せてしまうと、かつての野田氏の言う「シロアリ」がたかるというのは、本当のことだと実感する。

 そこに使える財源があれば、官僚を含めて、それを自分のビジネスにできるかもしれない関係者は、財政再建全体のことなど考えずに、自分のビジネスにそのお金を使おうとする。そこには確かに経済的動機が存在する。現代の日本には、実力と利他的動機を兼ね備えた確信犯的なエリートなど1人もいない。この現実は直視すべきだ。

 さて、消費増税の増税分ほど金額は大きくないが、利益誘導に熱心な連中が、おそらくは「盗みやすい」と目をつけた財源がある。それは、「休眠預金」だ。