上司部下も評価もない自由形組織

 クラウドネイティブは、2017年5月に創業し、企業の情報システム部門のコンサルティングや設計・開発を手掛けるITベンチャーだ。六本木にあるコワーキングスペースをオフィスにしているが、基本的にはフルリモートワークを推奨している。そして、前述した自己申告制度を「雰囲気給与」と名付け、創業時から実施している。

「雇い主と雇用者という関係はあっても、雇い主である私が他人の給料を決めたくなかった。雇い主が決めるとなると、本音を言えば最低賃金を提示してしまう。そのため、『欲しい金額を教えて』と社員に言い出したところから始まりました」(齊藤氏)

 また、評価制度がないのにも理由がある。

「上司部下の関係を作りたくなかったんです。自分自身のこともよく分かっていないのに、他人を評価できるわけがないという考えからです」(齊藤氏)

“危機感”のある厳しい制度

 上司部下の関係も存在せず、評価もない。さらに給与は自己申告で決まる。一般企業に慣れている人からすれば特異に感じられるが、社員からの評判は上々だ。創業メンバーの1人は「雰囲気給与は、自分に危機感を持つための良い制度だ」と推す。

「前職は、高く評価されると給与のベースが上がる仕組みでした。そのベースは翌月すぐに結果を出さなくても維持されるので、サボっていても給与はもらえ、安定と安心感がありました。それに対して雰囲気給与は、会社や上司に評価されるのではなく、自分で自分の評価をしなければなりません。自分が本当に結果を出せたのか、顧客に価値を提供できたか、いくら稼げたのか。本当の意味で意識するようになるんです」(創業メンバー)

“給与を決める”という過程を通して自分を評価することで、突き詰めて自分の市場価値を考えるきっかけになるのだ。

「自分が申告した金額を、ほかの社員がどう見るのか考えていくと、給与を2万円上げる根拠なんて曖昧であることに気付きます。“結果を出し続けなければならない”という危機感を常に持ち続けられる」(創業メンバー)

コミュニケーションの“オープン化”が重要

Slack上のやり取り 写真提供:クラウドネイティブ
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 自分の成果や市場価値と向き合える「雰囲気給与」だが、うまく運用できている理由の1つは、クラウドネイティブが少数精鋭の組織であることだ。組織が大きくなると、部署や組織ごとに役割や評価基準が変化することも考慮して、細分化やガバナンス強化が必要になる。

 もう1つの理由は、オープンなコミュニケーションを徹底していることだ。フレックスでリモートワークを推奨している勤務形態から、常にコミュニケーションツール『Slack(スラック)』を使っている。どこにいても、誰がいつ何をやっているのか、常にわかる状態を作っているのだ。