「Slackでお互いの行動を知っているから、給与を決める際も基本的に納得のいく金額しか申告しません。逆に、自分の動きを知ってもらわないと、給与提示の際にほかの社員からの納得感が得られないので、自然とアウトプットを意識するようになり、仕事の質が上がります」(齊藤氏)

 通常1対1で行われがちな新人教育でも、オープン化を徹底している。

「新人教育がうまくいっていない場合、先輩社員は『教え方が悪い』と言われ、新入社員は『覚えが悪い』と言われてしまいます。これは、やり取りが密室化していて、外から実情がわからなくなっているせいで起こる。そこで私たちは、やり取りをすべてオープンにして経過も追えるようにします。その中で問題が発生したら、ほかの社員が手を差し伸べるカルチャーが自然とできていくんです」(齊藤氏)

 この過程を社員全員が見ることで、結果として、納得感のある雰囲気給与の金額決定につながる。同時に、自分で自分の給与を決めようとすると、自然と他の人の仕事も気にかけるようになる効果もある。

 4月に入社した新入社員も効果を実感している。

「一緒の空間にいても、隣が何をしているかわからない組織もある中で、当社はすべて見えている状態。自分の評価を裏付けするためにちゃんと報告するようになります。また、評価はありませんが、他の社員の仕事ぶりを見て、『もっともらっていいんじゃないか』と意見が出ることもあります」

雰囲気給与が成立する裏にある「社会心理」

 人間は、ひとりでは仕事はできない。社会に属している時点で他者との信頼関係を元に成り立っている。この制度は、こうした人間の社会心理をうまく突いた構造になっているのだ。

「雰囲気給与には選択権があります。妥当な金額を提示して、納得感のある給与をもらい社員との信頼関係を保つか、高い金額を提示して、ほかの社員との信頼関係を崩してでも給与が欲しいかとの天秤なのです。たとえ高額を提示したとしても、社員全員が納得できるほどその社員が結果を出していれば、信頼関係は維持されるということです」(齊藤氏)