インド・ニューデリーの大渋滞インド・ニューデリーの大渋滞 (2019年9月撮影)。インドは人口増によって、さらに世界で存在感を強めるかもしれない Photo:HindustanTimes/gettyimages

「この数世紀にわたって、資本主義を支えてきた経済成長の多くは、実際には、若者を中心とするより多くの人口によってより多くが消費された結果にすぎなかったのかもしれない」

 米国の作家・投資家のザチャラー・カラベル氏は、米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ・リポート(FAR)」2019年10月号の論文「人口減少と資本主義の終焉」でそう述べている。「未来の戦争や紛争を考える上でも、人口は重要な要因だ」と考える彼は、同論文で今年出版された人口に関する2冊の本を紹介していた。

 1冊は人口学者ポール・モーランド氏の『The Human Tide(邦題:人口で語る世界史)』である。同書には、人口の変化は「社会に衝撃を与え、人々が気づかぬ形で歴史の流れを変えてきた」とある。

 また、かつて英米が順に世界経済の覇権を握った際は、両国に人口の顕著な増加と工業化進展の相乗作用が見られたという。明治維新からわずか数十年後に日本海軍がロシアのバルチック艦隊を撃破したことは西洋社会に衝撃を与えたが、その背景にも同じ相乗作用が存在したと解説されている。

 もう1冊はダレル・ブリッカー氏とジョン・イビットソン氏の共著『Empty Planet』だ。

 今後の世界人口は国際連合の予想よりも早い時期に減少に転じ得るため、「われわれは人口爆弾(人口激増)に直面しているのではなく、冷酷に何世代も続く、人類という群れを淘汰していく人口バスト(人口激減)の問題に直面している」と、同書は説く。

 世界人口が減少に転じる時期については諸説あるが、「それが起き始めたら資本主義は機能できるのか?」とカラベル氏は懸念する。高齢化し、人口が縮小すれば、全般的に消費は縮小するからだ。

 その具体例として日本が挙げられていた。「人口の成長がゼロかマイナスの世界では、おそらく経済成長もゼロかマイナスになる」。