「無秩序」な状況での対応力は
ビジネスでも競争優位の源泉

 世の中は不確実性や予想不能なことに溢れている。明日の天気、大地震・台風といった自然災害、トランプ大統領再選の有無、香港情勢や英ブレグジットの行方など、不確実で予想不能(もしくは困難)なことはたくさんある。

 私たちの日常は、このような不確実性を頭の片隅に入れつつ、計算可能な状況を前提として、最大限の効率性と効果を想定して運営されている。しかし、この10年間を振り返っても、東日本大震災、熊本・北海道の大地震など想定外の天災に遭うリスクと常に隣り合わせであるし、米中貿易戦争、日韓関係の悪化などが緊密なグローバル・サプライチェーンを脅かし、事業の見通しを不透明にしている。私たちは、思っている以上にコントロールの効かない環境の中で生きている。

 ラグビーという競技は、セットプレーや緻密なサインプレーが多く、非常に戦略的なスポーツだ。オールブラックスを目指していた元ラガーマンでもある在日ニュージーランド大使館の外交官は、「ラグビーは知的なスポーツであり、肉体だけではなく知性も鍛えなければならない」と私に語った。

 しかし一方で、あの楕円形のボールのイレギュラーなバウンドのお陰で、ラグビーには様々なドラマが生まれる。ひとたび楕円形のボールを転がすと、どこに行くのかわからない。ラグビーでは、15人が整然と対峙する敵の陣形を崩すために、キックを使って意図的に無秩序(アンストラクチャ)な状態を作り出すことがよくある。ラグビー強国は、この無秩序の状況での対応力が極めて高い。そして、不確実性の高いアンストラクチャな環境で力を発揮するためには、組織の柔軟性、多様性、創造性が求められる。

 急速に変化する外部環境に柔軟に対応することが求められるビジネスの世界でも、予想可能な未来を前提としていると足元をすくわれるリスクが高まる。ラグビーのようにアンストラクチャな環境を自ら生み出す必要はないかもしれないが、アンストラクチャな状況を「想定の範囲内」として、普段から対応力を磨いておくことは必須と言える。