今の天皇の血筋は「継体天皇」から

 だから学者のほとんどは、今の天皇家の血筋は「継体天皇」から始まったと考えています。

 それまでにたくさんの大王がいたと思います。
 たとえば、以前、触れた「百舌鳥古墳群」に葬られている人々です。

 でも今の天皇家と関係があるかどうかは永遠にわからない。
 古墳を掘ればわかるかもしれません。
 でも、日本は掘らないのでわからないのです。

 最初期の大王は、男性でも女性でも、とにかく力のある人でした。
 それは「日本経済新聞」に連載された池澤夏樹さんの小説「ワカタケル」を見てもわかります。

 当時は豪族の連合政権だったので、力がなかったら示しがつかない。
 だから天皇は男性でも女性でも、立派な成人でした。

 皇族の歴史上、子どもが天皇になったことは昔は1度もない。
 変わったのは、持統天皇からです。

 持統天皇は非常に優秀だったので、自分の子どもに継がせたかった。
 でも、子どもが早く死んでしまった。
 孫の文武(もんむ)天皇(在位697‐707)が15歳になるのを待って即位させますが、これが幼帝の始まりです。

 それまで10代で即位した天皇は一人もいなかった。
 持統天皇はめちゃくちゃ能力が高い人だったので、誰も反対はできなかった。でも、さすがに無理があるので、神話をでっち上げたのです。

 日本では「天孫降臨(てんそんこうりん)神話」といわれていますが、神様はだいたい子どもに権力を譲り渡します。