ドル側の要因もある。金利の低下したドルがキャリー取引の調達通貨として使われる機会が増え、円と同じ特性をドルが持ち始めたことだ。これによって、ドルと円は市場心理の明暗に応じて同じ方向へ動くことが増え始めた。

 4月の通貨オプション市場では、ドル/円の1年物予想変動率(インプライド・ボラティリティー)が過去最低を更新した。

光明はクロス円

 斜陽の円相場にも光明はある。ユーロ/円や豪ドル/円といった、クロス円の取引は増加していることだ。主要クロスだけでなく、対新興国通貨も増加している。BISによると「高金利通貨の対円取引は日本の個人投資家に魅力があり、世界平均より取引高の増加ペースが早い」という。

 BISの集計では、トルコリラ/円と南アフリカランド/円、ブラジルレアル/円を合計すると、今年4月の1日平均取引高は120億ドル。ドル/円の取引規模にはまだ遠く及ばないが、16年の70億ドルからほぼ倍増した。取引通貨の広がりを受けて、クロス円取引に占めるユーロ/円の割合は、04年の8割超から19年に5割を割り込んだ。

 しかし、その理由も日本経済の「低温度」にある。国内の低金利環境が長引く中、運用難に悩む国内大手機関投資家が、リスクは高くても金利収入が見込めそうな国や発行体をやむなく対象とし始めるなど、投資先を広げているためだ。

 通貨の安定は、企業にとっては収益の安定につながるため、必ずしも悪いことではない。むしろ安定を望む声の方が多いだろう。しかし、通貨の動かない理由が日本経済への失望では、明るい未来は描けない。

(基太村真司/編集:青山敦子)

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