ピラミッド型組織の限界

 OKANのミッションは、“働く人のライフスタイルを豊かにすること”だ。主力事業のオフィスおかんも、既存の社員食堂に代わる食の福利厚生サービスであり、食生活の支援を通して、働く人と企業に起こる諸問題を解決したいという思いが込められている。だが、働き方が急速に多様化している中、このミッションを達成するには、時代をつかんで動くスピードが必要だ。

「創業時からずっとピラミッド型の組織にしていた理由は、コントロールしやすいから。経営者の声を反映し、素早く動くことのできる構造だと考えていました」(沢木氏)

 2012年12月に創業してからピラミッド型組織で進めてきたが、2018年初頭に社員が30人になった途端、「意思決定のスピードが遅くなってきた」という。

「小さな組織にもかかわらず、拡大期のせいか、部門間の分断が起こってしまいました。社員ひとりひとりが、“なんのために活動しているか”という目的が形骸化してしまった。その結果、同じ業務を別部門で重複してやってしまったり、上層部が調整役として労力を割かなければならなくなったりして、余計な意思決定が必要になったんです」(沢木氏)

 同じミッションのもと、ひとつの会社で部門別に役割を分担して動いていたはずなのに、全体的な連動性が損なわれていき、スピードが落ちた。

組織を崩壊させる決断

「私自身も、創業当時の感覚のまま部下を管理しようとしていて、体制に限界がきていたのだと思います。社員から不満の声も増えていたので、まずは各チームのリーダーを集め、会議をしました」(沢木氏)

ピラミッド型組織は、あえて「崩壊」させた方がいい理由「どんな組織にするか」全社員で話し合う様子 写真提供:OKAN

 リーダー同士で議論を始めると、「長期的なゴールを目指した方が良い」という意見や「今は目の前の業績に注力すべきだ」という意見など、あらゆる声が挙がった。そこから丁寧に、それぞれの意見の「根底にある課題」は何なのかを整理していった。その結果、いくつかの課題が可視化された。あとは、それを解決するだけである。

 しかし、「根底にある課題」を解決するための担当者に誰を充てるかは難しい問題だった。会社のことをよく知っているチームリーダーが適任であるのは明らかだが、その社員が抜けたチームはリーダーが不在になる。その穴を埋めるために、新たにリーダーが必要となり、現状の人員配置を大きく変えざるをえなくなるのだ。

「ピラミッド型組織のまま、どうにか穴の埋まるベストな人員配置を模索しましたが、どこかを補充するとほかの領域で人が減ってスピードが落ちてしまう可能性があり、この割り当てが非常に難しかった。スタートアップは常に人手不足ですから、人的リソースをどこに割くかがとても重要なのです」(沢木氏)