「実はまだ、『ティール組織』を読んだことがないんです(笑)。当社の組織改革はフラットにすること自体が目的ではないですから。社員ひとりひとりが当事者意識をもって動ける風土を作る手段のひとつに過ぎません」(沢木氏)

社員に意思決定を任せる恐怖

 実際にフラット型の組織にした2018年4月から現在までで、組織の規模も売り上げも倍増した。もちろん、業績が好調なのにはあらゆる要因が関係しているものの、フラットになったことで意思決定のスピードが早まり、部門間の連携が増えたのは明らかだという。

「セールス担当が『自分はコーポ―レートに回った方がいい』と、自ら組織にとってプラスになることを判断し、勝手に人事異動が行われることもある」と沢木氏は言う。

「フラット組織について話をすると、よく『経営者が自ら決定できないことに、怖さはないのか』と聞かれます。もちろん私も最初のうちは、『間違った判断をされるのではないか』という恐怖や戸惑いがありました。ですが、勇気を出して委ねてみて、考え方が変わりました。創業者と経営者は違います。スタートアップだと、創業者は絶対的存在として神格化されやすい。しかし、拡大期を迎え、社員の統制が難しくなった時に一番重視すべきなのは、創業者の考えではなく、“組織自体に宿る人格”、すなわちミッションです。経営者は、ミッションを遂行するための旗振り役でなければいけません」(沢木氏)

 沢木氏は、「信頼して社員に権限移譲するには、意思決定のよりどころとなるミッションが不可欠だ」と語る。

「ミッションが確固たる経典のように社員に浸透していれば、どんな社員でもミッションから逆算して決断してくれるので、安心して任せることができる。任せることができれば、同時多発的に意思決定できるスピードのある組織になれます。フラットな組織に固執しているわけではないので、今後のフェーズによって、またピラミッド型の組織が有効になるときがくるかもしれない。その時は、迷わずピラミッド型に戻します。常に、当社のミッションを貫くことができる、最適な組織のカタチを見つけていきたい」(沢木氏)

 すでに確立した組織を変えることは、勇気がいる。しかし、常に「何のための組織なのか」を突き詰めて考えていれば、自ずと正しい決断ができ、尻込みせずに変革していけるのだ。