自分が死ぬ車を
誰が買うのでしょうね

【中山幸二部門長(法律分野)】

――政府の自動運転ロードマップでは「2020年までに移動サービスでレベル4(高度自動運転)」が始まることになっています。日本のレギュレーションが追い付いていない部分を整理して教えてください。

中山幸二所長(法律分野)中山幸二部門長(法律分野)

 道路運送車両法はレベル4まで想定しています。でも、道路交通法はレベル3(条件付自動運転)までしか想定していない。道路交通法を所管する警察庁はドライバーがいなければいけないという考えが根強いからです。「いざとなれば、すぐにシステムからドライバーに切り替わる」までのレベルは認めるというのが今の彼らのスタンスです。

 車両の認証(保安)基準もレベル3以上は世界で基準ができていません。独アウディの新車もレベル3の機能は備えていますが、封印していますよね。国際的な基準を今作ろうとしている。システムをどうやって測るか。今までは機械的に検査していました。これからは設計段階から設計思想を見ないといけません。

――自動運転を巡っては、トロッコ問題が話題です。

 ドイツでは17年、国の倫理委員会がガイドラインを公表しています。要するに無作為が正解。プログラムは被害者を選択してはいけない、と。ドイツの自動車メーカーはそれに則ってプログラミングするのでしょうね。

 一方、運転手、乗員が第一だという考え方を唱える人もいます。運転手・乗員優先の方がメーカーは安心して造れます。自分が死ぬかもしれない車を誰が買うのでしょうということになりますから。世界的には、運転手・乗員優先のクルマが売れていくのでしょう。

――日本の議論の状況をどう見ていますか。

 日本の自動車メーカーはまだ態度を表明していません。

 日本ではトロッコ問題になるといつも議論がストップする。外国の議論を紹介してそれで終わっちゃうのです。トロッコ問題は避けて通れないが、「そういう場面を作ってはいけないんだ」というのが今の状況だと思います。