1歳児エアガン連射事件が炙り出した「見守り体制」の限界なぜ、警察や児相は動けなかったのか。1歳児エアガン連射事件が問いかける、あまりにも深い課題(写真はイメージです) Photo:PIXTA

1歳児エアガン連射事件で
充分すぎた虐待の「赤信号」

 2019年11月6日、「1歳児にエアガンを連射」という衝撃的な虐待のニュースが報道された。1歳4ヵ月だった男児に、至近距離で強力エアガンを連射するなどの虐待を行った24歳の両親が逮捕されたのだ。発射されたプラスチック製の弾丸は、男児の衣服を貫通して皮膚を傷つけていたという。

 2018年12月に肺炎で死亡した後で病院に搬送された男児の全身には、エアガンで撃たれてできたアザが数十ヵ所あった。また低栄養状態にもあり、身長は60cm程度、体重は6kg程度だったと報道されている。やや小さめの、生後6ヶ月の乳児の体格だ。

 その両親の間には、亡くなった男児の他に、当時3歳の長男と生後3ヵ月の長女がいた。この他に次男もいたが、2016年に病死しており、経緯は現在のところ明らかになっていない。

 母親は、19歳のときに生まれた長男を妊娠して以来、ほぼ途切れなく妊娠していることになる。DV被害を受けている母親には、全く珍しくないパターンだ。「乳幼児の定期検診をほとんど受けさせていない」など、虐待に伴うことの多いパターンが数多く見られる。ここまで赤信号が重なっていれば、誰もが「何かありそうだ」と感じるだろう。

 もちろん、子どもと子育てに関わる児童相談所などの機関は、問題を把握していた。市の要保護児童対策地域協議会(要対協)も「要支援世帯」と認識しており、少なくとも放置はしていなかった。しかし結果として、男児の命は守られなかった。「警察と児童相談所が連携して情報共有していれば良かった」という意見もある。福岡県では、虐待通告事案情報の警察との全件共有はされていない。

 それにしても、男児が亡くなってから両親が逮捕されるまで、10ヵ月以上が経過している。なぜ、こんなに時間がかかったのだろうか。虐待の証拠としては、亡くなった男児のアザと低栄養だけで充分であろう。素人はそう考えてしまう。