地価の高い小学校区はどこか

 秋晴れの広がった11月中旬の朝、真っ赤な東京タワーが間近に見える港区の御成門交差点では、ランドセルを背負い紺色の帽子をかぶった児童が友達と言葉を交わしながら笑顔で通学していた。その横で、「日本近代初等教育発祥の地」と書かれた石碑があった。

 日本の教育といえば、明治5(1872)年の学制発布がそのスタートといわれるが、東京府はそれに先立つ明治3(1870)年に、寺院を仮校舎として6つの小学校を設立した。その第一校として置いたのが増上寺子院・源流院であり、この石碑が示す場所であった。その後、移転や統合を経たものの、日本最古の公立小学校の源流を組むのが、この地にある御成門小学校である。

 今回、われわれは都内の小学校区に関する住宅地価を調べた。すると都内トップだったのが、この由緒ある御成門小学校区だった。1平方メートルあたりの平均住宅価格は287万円に及んだ。それもそのはずで、近隣は愛宕の高級マンションが建ち並び、虎ノ門ヒルズを含む再開発地域でもあるからだ。

 連載第3回の記事(東京・小学校区「教育環境力」ランキング【全49市区・推計年収ベスト3】)では、本来は把握しにくい平均年収の算出をオープンデータから試みた。だが、資産や地価、不動産取引の実態を盛り込んでいない推計モデルには限界があり、必ずしも全てが実態を捉え切れているとは限らない。そこで、小学校区『教育環境力』ランキングでは、純粋な地価の要素もランキングに組み込んでいる。
 
 なぜなら推計年収は、大規模な全数調査である国勢調査を主に使っているため、「面」をとらえられる。それに対して地価は、数字は正確なものの取引地点が限られるため、「点」をとらえるのに適しており,互いに補完関係になるからだ。

住宅地価を小学校区ごとに取得する

 データは、国土数値情報の「地価公示データ」(2019年)から、住宅や商業、工業などの土地の用途にあわせた地価を取得した。そこで、小学校の住所から半径1km圏内にある住宅用途の地価の平均値を算出した(そのため今回の地価データは厳密には「学校の通学区」に全てあるとは限らない)。

 住宅用途の地価が高ければ、より年収の高い世帯が住んでいる可能性が高い。さらに、年収の高さと親の教育の熱心さの関係については、これまでの記事で述べてきた通り、関係性が強いと考えている(第2回記事「東京・小学校区『教育環境力』ランキング【学力偏差値トップ25】」参照)。

 実際、一時は児童が減少し、5校が統廃合した御成門小学校も、いまや「公立小移民時代」を迎え、教育熱心な親の人気が集まっている。港区が学校選択希望制ということもあり、ここ2年連続で受け入れ数の上限を超えた入学希望者が集まり、抽選を行っているほどだ。

 それでは、次からは都内トップ5の小学校区をランキング形式でご紹介しよう。

千代田区と港区が圧勝
平均住宅地価ベスト5!