習近平・中国共産党総書記Photo:Pool/gettyimages

習近平が公の場で言及した
中国共産党の「民主」とは

「我々が進んでいるのは中国の特色ある社会主義政治発展の道である。人民民主とは全過程の民主にほかならない。すべての重大な立法や政策は手続きに基づき、民主的相談を経て、科学的、民主的な決定を通じて生まれている。あなた方が中国の特色ある社会主義民主の発展のために引き続き貢献すること、そのために尽力することを私は望んでいる」

 11月2日午後、自身にとっては「古巣」に当たる上海市を視察していた習近平総書記(以下肩書き略)が、同市長寧区虹橋街道にある古北市民センターにやってきた。地元の幹部や市民と向き合った際に発した言葉が冒頭のものである。習近平本人が、公式会議や重要談話で原稿を読み上げるのではなく、外部の人間が原則近づけない中南海の奥底でもなく、流れや動きの中で、公の場で「民主」に言及することはまれである。少なくとも筆者にとっては非常に新鮮に映った。中国民主化研究と題する本連載にとっても、貴重な素材として検証に値するものであるといえる。

 筆者自身、これまでの中国共産党政治への理解、その舞台で日々工作に従事する党員との議論を元に、習近平のこの発言を経てくみ取った教訓、再確認した認識が3つある。

 1つは、中国は共産党が絶対的、指導的立場にある限り、社会主義の道を歩み続けるということである。

 習近平率いる共産党は、「2つの100年目標」として、中国共産党結党100周年に当たる2021年、中華人民共和国建国百周年に当たる2049年を時間軸に国家目標を立ててきた。これからちょうど30年後に当たる2049年の時点で、中国を「中国の特色ある社会主義現代化国家」に仕立てることを目標と定めている。

 これから中国共産党や中国に、いつどのようにして何が起こるかは計り知れない。だが、ただ1つだけ確かなことがある。それは、中国共産党が中国を領導する限り、社会主義という政治体制、イデオロギーを自ら放棄することはないということだ。中国共産党は自らが健在する限り、「マルクス・レーニン主義を中国化」したイデオロギー、「中国の特色ある社会主義」という政治体制を死守、誇示、実践し続けるであろう。

 2つに、習近平率いる中国共産党は、自らが「非民主的」な政治体制、統治形態、イデオロギーを保持、実践する国家だと認識していないということである。