橘玲の世界投資見聞録 2019年11月21日

長い歴史と伝統をもつイランを旅するなら5月に南部を中心に
8泊9日の日程がお勧め。ただしお酒もSNSもクレジットカードもNG
【橘玲の世界投資見聞録】

イランのビザはe-VISAで各段に容易に。
パスポートにはイランに渡航した形跡はまったく残らない

 イラン核合意からアメリカが離脱したことにともなって、イラン渡航歴がある場合は米国のビザ免除プログラムの対象外とされ、短期の観光旅行でもESTA(エスタ)ではなく正規の観光ビザが必要になった。イラン旅行を計画する際には、まずこの制限を承知しておく必要がある。

 従来、イラン大使館・領事館で観光ビザを取得するには招待状とイラン外務省の許可番号が必要で、国内の旅行代理店を通して手続きするのがふつうだった。テヘランのエマーム・ホメイニー国際空港でアライバル・ビザを取得することもできるようだが、入国が認められないこともあるとのことであまり勧められない。

 2018年10月よりe-VISA(電子ビザ)の発給がスタートしたことで、シングルビザの取得がはるかに容易になった。

 まずイラン大使館の電子ビザのサイトにアクセスし、必要な情報を入力したあとパスポートコピーと顔写真の画像をアップロードする。とくに規定はないが、女性の場合はヒジャブ(ヴェール)姿で顔写真を撮影した方がいいかもしれない。

 電子ビザの情報を送ると、申請を受け付けたというメールと、申請状況を確認するためのトラッキングコードが送られてくる。5営業日たっても返信がない場合、このコードで手続き状況を確認できるとのことだが、イランへの旅行者が減っているためか、翌日にはビザ申請が認められたというメールと、VISA GRANT NOTICEという添付書類が送られてきた。

 次はこの書類をプリントアウトし、パスポートといっしょにイラン大使館・領事館(東京都南麻布)に持っていく。領事館窓口でビザ代金(シングルビザで1人2500円)を支払うと、4営業日でA4の紙に印刷された正規のビザが発給される(パスポートにビザのシールは貼られない)。昼過ぎに訪れたのだが私以外にビザ申請者は誰もおらず、すぐに対応してもらえた。

 申請は本人でなければならないが、受け取りは代理でも可。急ぎの場合は、追加料金を支払えば緊急発行してもらえる。地方在住者は郵送でも受けつけているようだ。

 エマーム・ホメイニー国際空港の入国管理はイラン人と外国人に分かれており、ドバイからの便(ほぼ満席)で外国人窓口に並んだのは私も含めて3組だけだった。入国はいたってあっさりしたもので、パスポートとビザの用紙を係官に提出すると、パスポートの顔写真を確認しただけで通された。パスポートにスタンプを捺されないばかりか、パスポート情報をスキャンすることもない。ビザを発給した時点で必要な情報は登録してあるから、実際に入国したかどうかは関係ないということのようだ。

 この手続きからわかるように、パスポートにはイランに渡航した形跡はまったく残らない。これがアメリカの制裁対策であることは明らかだが、イラン旅行を伏せてESTAで問題なく米国に入国できるかどうか実際に試したわけではないので、あとは自己責任ということになる(リスクを取りたくなければアメリカ領事館で観光ビザを取得すればいい)。

 イランではホテルに宿泊する際、受付にパスポートを預けるが、ビザもいっしょに求められることがあるので、旅行中はかならず携行するようにしよう。

イランでは100ドル(1万1000円)が約5000万リアルと通貨が下落。
経済制裁のため外国人旅行者はクレジットカードが使えない

 イランは経済制裁によって国際的な金融取引システムから遮断されているため、外国人旅行者はATMから現地通貨を引き出すことも、クレジットカードで支払いをすることもできない。そのため米ドルを現地通貨に両替するか、米ドルの現金(紙幣のみ)で支払いをすることになる(ユーロも受けつけられるようだ)。

 ただし、大半の旅行者はツアーを利用するので、現地通貨はほとんど必要ない。ツアー代金にはホテル、国内移動(飛行機と車)、朝食・昼食、観光施設への入場料が含まれており、実際に使うのは夕食とちょっとした買い物代金だけだ。6泊7日の旅行で、50ドル(5500円)から100ドル(1万1000円)を両替すればじゅうぶんだといわれた。少額を両替するようアドバイスされるのはドルへの再両替ができないからだ。

 イランの通貨はリアルで、公定レートと実勢レートが大きく異なる。インターネットで調べると公定レートは1円≒0.0033リアルと表示されるが、空港で100ドルを両替したところ1円≒0.0002円で実勢レートの30分の2になっていた。

 イランは4桁のデノミが検討されているほど通貨価値が下落しており、100ドル(1万1000円)が約5000万リアルになる。50万リアル紙幣もあるが、両替は10万リアル紙幣で渡されるため、100ドルを出すと500枚のリアル紙幣が返ってきてレンガのような厚さになる。10万リアルを約200円と計算すればいいから、意外とすぐに慣れる。

500枚の10万リアル紙幣     (Photo:ⒸAlt Invest Com)

 

 これではいくらなんでも不便ではないかと思うだろうが、イランはじつは金融決済システムが発達していて、小さな商店にもカード端末がある。地元のひとたちはクレジットカードやデビットカードでスマートな支払いをしており、分厚い札束をカバンやポケットに詰め込んでいるのは外国人旅行者だけということになる。

 さらに混乱するのは、日常的には「トマーン」という単位が使われることだ。1トマーンは10リアルで、さらに下三桁をはぶいた金額でやりとりされる。「いくら?」と訊いて「Ten」といわれると10,000トマーンのことで、これは100,000リアルになる。最初はよくわからなかったので、「ずいぶん安いな」と思いながら10万リアル紙幣を渡してお釣りを待っていたら、「なんだこいつは?」という顔をされた。

 外国人旅行者が少ないこともあるだろうが、どの店も明朗会計でごまかされるようなことはなかった。土産物店はドル支払いがふつうなので、面倒な計算をせずにドルで価格を聞いた方が早い。新興国はどこも同じだが、破れていたり皺が寄っているドル紙幣は受けつけられないので、日本で米ドルを調達する際は、両替レートが多少悪くても米ドルの新札を用意してくれる銀行の両替所などを利用したほうがいいだろう。もっとも使い勝手がいいのが20ドル札で、少額の支払い用に1ドル、5ドル、10ドル札を適当に用意しておこう。

 イランといえばペルシア絨毯で、手織りのシルクでノット(結び目)の細かなものはきわめて高額だ(それに対して羊毛の絨毯は手織りでも2万円程度からある)。100万円を超えるような買い物も現金で支払わなければならないかというと、エスファハーンの絨毯専門店では「クレジットカード払いでも大丈夫だよ」といわれた。その店はイスタンブールやドバイにも支店があり、クレジットカード情報を伝えて海外で決済することで経済制裁を回避しているようだ。

 もっとも私が土産に買ったのは畳んでスーツケースに入る小さな絨毯で、米ドルの現金で支払ったから、実際にクレジットカードを使ってみたわけではない。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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