中村俊輔J1昇格に王手をかける横浜FCの中村俊輔 写真:徳原隆元/アフロ

13年ぶりとなるJ1昇格へ王手をかけている横浜FCが24日、ホームのニッパツ三ツ沢球技場に愛媛FCを迎えるJ2最終節に臨む。勝利して5連勝でシーズンを締めくくれば、無条件で悲願が成就する運命の大一番へ。今夏にJ1のジュビロ磐田から完全移籍で加入し、23年目を迎えたプロ人生で初体験となる2部リーグを戦ってきた41歳の大ベテラン、元日本代表の中村俊輔がさまざまな葛藤を乗り越え、ボランチとして存在感を放つまでの軌跡を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

ベンチ外から先発へ復活
無我夢中でラストチャンスにかける

 気がつけば13年ぶりとなるJ1昇格へ王手をかけていた。今夏にJ1のジュビロ磐田からJ2の横浜FCへ移籍し、サッカー人生で初めてとなる2部リーグの舞台で戦ってきた41歳の大ベテラン、中村俊輔のいま現在の心境を表せば、無我夢中という言葉に凝縮される。

「この何試合か、別にそういうので選手たちがあまり硬くなっていない。一番でかいのは、真ん中の4人が一気に代わったこと。オレなんかもう必死で、アピールする方に頭とメンタルが行っている。今日も走り回って、点差とかに関係なく、とにかく勝つことしか考えていなかった」

 敵地シティライトスタジアムでファジアーノ岡山を1-0で下し、4連勝をマークした16日の明治安田生命J2リーグ第41節。取材エリアに姿を現した俊輔は「そういう」と位置づけたJ1昇格争いではなく、ベンチから注がれるチームメイトの視線にプレッシャーを感じていると打ち明けた。

「ベンチ外だった選手がいきなり先発って、普通はなかなかない。ラストチャンスが来た、とみんな思っているし、これでまた負けるとか、ちょっとでもミスをすれば、ベンチにはすごい選手たちがいるわけだからね。だから、勝ち点とかが本当に気にならない」

 J1へ自動昇格できる2位へ浮上し、しっかりとキープしてきた4連勝の過程で、俊輔はボランチとしてすべてで先発。東京ヴェルディとの第38節ではペナルティーエリアの外、約20メートルの距離から強烈な移籍後初ゴールを突き刺して連勝スタートに貢献している。

 しかし、リーグ戦の軌跡をさらにさかのぼれば、ヴェルディ戦の前は5試合続けて出場機会を得られなかった。ツエーゲン金沢との第36節、京都サンガとの第37節はベンチにすら入っていない。けがをしていたわけではない。移籍後で初めて訪れた状況に、おのずと危機感が頭をもたげてきた。