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岸見 息子さんは学ぶ喜びを知っておられるのでは?

ブレイディ 知らないことを知るのは好きですね。

岸見 そうでしょう? それこそが大切なのです。ところが大人たちは誤解していて、勉強はつらいことだと見ている。具体的にいうと受験勉強ですね。すごくつらくて、はちまきを巻いて歯を食いしばってやるものだと。大人がそう思っていると子どももそう思ってしまうのです。知らないことを知ることは楽しいことのはずです。

 ブレイディさんご自身も学ぶことが好きでしょう?

ブレイディ 私は……偏っていました(笑)。偏っていましたけど、好きなことはすごく好きでしたね(笑)。

岸見 それがいいですね。大人が楽しく勉強している様子を、知らない間に子どもが見て学ぶということだと思います。だから何も言わなくても勉強する子どもになる。親が「勉強しなさい」と言えば言うほど子どもは反発します。

息子が母のスーツケースに忍ばせた
スピーチ前の三つのアドバイス

岸見 本の中で描かれているブレイディさんと息子さんはとても良い関係ですが、子育てのなかで悩み事はありますか?

ブレイディ うーん、ほぼないですね。というか、私は子どもにこうなってほしいというのがあまりないんです。私と息子は「母と子」というよりは友だちなのかなぁ。

「ノンフィクション本大賞」をいただいて、表彰式でスピーチをすることになったんです。それで東京に着いてスーツケースを開けたところ、息子が入れたメッセージが入っていました。A4の紙が二つに畳んであって、表に「スピーチの日まで読まないこと」と(笑)。そう書いてあったら、普通読みたくなるじゃないですか? それで紙を開いたら、スピーチするにあたっての三つのアドバイスが記されていました(笑)。