『外資系で自分らしく働ける人に一番大切なこと』は著者の宮原伸生さんが、日本企業を飛び出し、ベネトンスポーツ、日本コカ・コーラ、LVMH(モエヘネシー・ディアジオ)、ケロッグ、GSK(グラクソ・スミスクライン)などで、もがきながら見つけた「新しい働き方」を紹介する本です。そのエッセンスをコンパクトに紹介します。

外資系の「アップ・オア・アウト」は、本当は違う意味じゃないのか?Photo: Adobe Stock

はじめての外資系で受けた衝撃!

留学中は博報堂を休職していたので、卒業後は博報堂に戻るという選択肢もありましたが、たまたま大学にリクルーティングに来ていた会社があり、興味を持ちました。それが、コンサルティング会社のマッキンゼーです。

今でこそ多くの人に知られる会社ですが、当時はまったく無名でした。日本法人は大前研一さんが率いていて、ごく小さな規模でした。

初めての転職、初めての外資系、そしてマッキンゼーという会社は、私にとって衝撃的な経験でした。とんでもなく頭のいい人、頭のキレる人たちがたくさんいたからです。

代表の大前さんもそうですし、後にコンサルタントとして名を上げた人、政治家になった人も在籍していました。正直、「これは大変なことになったぞ」と思いました。

特にマッキンゼーなどのコンサルティング会社をはじめとして、外資について“Up or Out”(昇進するか、辞めるか)という言葉をイメージする人も少なくないようです。実際には、そういうことが明確にどこかに書かれているわけではありません。“Up or Out”のUpが何を意味しているのか、はっきりしていないところに注意が必要です。

私の感覚ではむしろ“Grow or Out”(成長するか、辞めるか)だと思っていました。現実にそうでしたし、数多くの外資系企業で働いてきた今では、そうじゃなければ意味がないと思います。

実際、外資に勤めている人の中には、“鍛えられて成長している感じ”を口にする人が多く、それを外資で働くメリットに挙げます。外資でマーケティングをやっている友人は、「毎日、ジムに通って筋肉がついているという感覚」と言っていました。とにかく、“鍛えられ感”は満載です。

また、ビジネス上のコミュニケーションの相手が企業の幹部たちばかりですから、会社の本丸を見ている、深い世界が見えている、という実感が間違いなくありました。

ただ、若い者が会社の上層部の人たちと対峙することには限界があると、私は感じていました。相手をのんでかかるようなことは、とてもできないからです。

しかし、クライアントと同じ視点に立っていては、大胆な仮説を立てることはできません。オペレーショナルに可能なのか、ということばかり考えていたら、思い切ったアイデアは出てこないのです。

その意味で、ある種の大胆さ、図太さや強引さのようなものが、コンサルタントには必要になる。ですから、マッキンゼーでパートナーの道に進むのがいいのかと考えたとき、自分には難しいのではないかと思うようになっていきました。

そんなとき、マッキンゼー時代のクライアントだった外資系企業の担当者がベネトンスポーツの社長になり、マーケティング・マネジャーをやってみないかと声をかけてくれたのです。これがまさしく転機になりました。この会社でマーケティングの実務を経験できたことで、その後の道が開けていきました。