これまで、大阪維新の会の「船中八策」について、フラット・タックスの問題(第25回) 、消費税を地方税にすることの問題(第26回)と、2回にわたって中身を検証してきた。今回は、「地方交付税の廃止」という船中八策の政策について、考えてみたい。

「地方交付税制度の廃止」と
「地方間財政調整制度の導入」

 7月6日に公表された船中八策(改定案)を見ると、「地方財政計画制度・地方交付税制度の廃止」と「消費税の地方税化と地方間財政調整制度」をうたっている。

 いずれも、国からの財政的独立を果たして、地方分権にふさわしい政治体制を構築するという考え方に基づくものであろう。わが国の複雑な経済社会に、きめ細かい公共サービスを効率的で効果的に提供するためには、地方にカネとヒトと権限を委譲していくほかない、という考え方には大いに同意したい。

 一方で懸念もある。

 1番目は、わが国は、ドイツや米国のような連邦国家ではないので、自ずからさまざまな憲法上の制約がある、ということである。これが、後述する、地方公共団体間での財源調整メカニズム(水平的調整)の導入の是非である。

 次に、国からの補助金や交付税措置に慣れきっている現在の地方の首長さんの大部分に、「みずから努力しろ、今日から競争だ」といって、意識が変わるだろうかということだ。分権は、美しい響きを持っているが、橋下市長のような強力なリーダーシップとビジョンを持つ自治体はやっていけるのかもしれない。しかし、そうでない大部分の首長に、国家からの自立といっても、果たして行政サービスは本当に向上するのか、かえって非効率で無駄なことにならないか、という懸念である。

 後者は、基本的には首長の資質の問題なので、ここでは取り上げない。ここでは、前者の問題、つまり、「交付税を廃止し地方間で財政調整する」ことの課題を考えてみたい。