ヒト・モノ・カネに依存しない「無形資産経営」

 技術開発ともにエアロネクストが注力するのが、IP(知財)の管理だ。これまで約20件の特許を取得し、4D GRAVITYを中心とした特許ポートフォリオを構築。社員11人ながら知財を担当するCIPO(Chief IP Officer)と、ライセンス実務に携わる弁理士経験者を有している。田路氏は内閣府知的財産戦略本部の「構想委員会」委員にも就任している。

 彼らがIP管理を徹底する背景には、田路氏のキャリアがある。エアロネクストはドローン開発というテクノロジー企業のトップでありながら、田路氏には新卒で電通に入社した後、電通と米国企業が合同で設立した企業でテレビ番組表「Gガイド」普及のために奔走するなどしており、技術開発の経験はない。

「この時担当していたのが、Gガイドのライセンスを他社に提供してお金にするライセンスビジネスでした。会社が持つ技術(≒知財)をメタ化したのが特許で、それを広めるのがライセンス。どんな優れた技術もただ存在するだけでは、求められません。ユースケースやサービスを示すことで、その技術で何ができるのかを世界に広めるのがIP戦略です」(田路氏)

 そんな彼が、新天地として選択したのがドローン業界だった。その理由を「知財のノウハウをより生かせるのは、これから発展する新産業。ドローンは20世紀における自動車のように、社会にとって欠かせない存在になる」と説明する。2017年7月、ドローン産業を(IPで)支援するDRONE iPLAB(DiPL)を共同創業。エアロネクストは、その支援先の1つだった。

 4D GRAVITYを発明したのは、バルーン空撮などで高層ビルなどの眺望撮影をしていた鈴木陽一氏(現CTO)。眺望撮影の手段として自作ドローンを使用するうちに、機体の重心制御の重要性に気づきこの技術を思いついた。

「いまも鈴木さんは山梨で技術開発に打ち込んでいます。彼が生み出した形のない資産を、知財としてビジネスにするのが私の役割です。現在、現場で開発を担当するのは数人で、チームのほとんどは各分野のプロフェッショナルで構成し、量産化はパートナーに任せています。一般的にはヒト・モノ・カネを集めるのが経営者の役割だといわれていますが、これらに依存しないで勝負する『無形資産経営』を心掛けています」(田路氏)