ディープテックで行こう!食・環境(企業編)Photo:Somkak Sarykunthot/EyeEm/gettyimages

世界人口は2050年に97億人に達する見通し。どの生物より資源を消費する人間。持続可能な食の在り方、環境の守り方が不可欠だ。そこで特集「ディープテックで行こう!」(全14回)では、#1〜2の2回にわたって「食・環境」分野で注目の「ディープテック」を紹介する。#1は同分野の注目ベンチャー企業5社をお届けしよう。

「週刊ダイヤモンド」2019年10月26日号第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

食・環境 注目ベンチャー企業1
【チャレナジー】
台風どんと来い!の風力発電機

 プロペラのない風車が世界のエネルギー問題を解決する。東京都墨田区の倉庫でそんな未来を目指す企業がある。あらゆる風向きに対応でき、台風でも発電できる「垂直軸型マグナス式風力発電機」を開発するチャレナジーだ。

垂直軸型マグナス式風力発電機2018年から沖縄・石垣島で実証実験中の垂直軸型マグナス式風力発電機

 契機は福島第一原子力発電所の事故。キーエンスの開発職だった清水敦史CEOは、「人類は原発から脱却する必要がある」と考え、再生エネルギーの本を読みあさった。分かったのは風力発電が世界で急成長していること。また海岸線の長い日本は、風力に大きな可能性があることだった。だが現在、日本で風力が主流ではないのは、皮肉にも風のせいだ。台風が多く風向きも不安定なため、国内の風力発電機は年間4~6割も故障している。

清水敦史CEO東日本大震災を機に発電機を開発した清水敦史CEO

 チャレナジーは、空気の流れ(風)の中に回転する円筒を置くと流れに対して垂直の力=マグナス力が発生する原理を利用し、プロペラなしの発電機を開発した。風速40メートルまで発電可能で、強い台風程度なら発電可能。同70メートルまで倒壊しない。現在は石垣島で発電容量10キロワットの試作機が稼働中。同100キロワットの製品も開発している。2020年にフィリピンに設置するプロジェクトも進行中だ。