dot代表の冨田侑希氏(写真左)と、学習院大学客員教授の斉藤徹氏 Photo by Yoshiki Usui

学習院大学の学生たちが生み出した、新しい組織体のスタートアップがある。彼らは起業への熱意があったわけでも、明確なゴールやビジョンがあったわけでもない、どこにでもいる“普通の大学生”。ある授業から生まれた自主ゼミ「dot」が、彼らにとって大切な居場所となり、その場所を残すためにゆるりと起業。そして1年後に、黒字化を達成した。社会経験ゼロの大学生が重要視した価値観は何なのか。dotの成功の裏に隠された秘密に迫る。(フリーライター うすいよしき)

 起業は、明確なゴールやビジョンを持ってするものである――その常識は、もはやZ世代(1996年~2000年生まれの世代)には通用しなくなっているのかもしれない。

 そのモデルケースとなるのが、学習院大学に在籍していた5名の学生で創業したスタートアップ・dot(ドット)だ。起業家としても活躍し、現在は学習院大学経営学科の客員教授である斉藤徹氏。斉藤氏の授業の自主ゼミとしての活動が前身となっているdotは、2017年に法人化。現在は社員4名と有給インターン生が2名、そのほか100名を超える有志の大学生で構成される組織だ。起業から2年で、電通や博報堂、朝日新聞社、パナソニックなど、そうそうたる企業とプロジェクトを共にした実績がある。

 dotの経営に対してアドバイスもしている斉藤徹氏は、dotメンバーの恩師であると同時に、自身も起業家としての顔を持つ。1991年に創業したフレックスファームは時価総額100億円超えのベンチャーにまで成長したが、バブル崩壊とともに銀行の貸しはがしに遭い、40歳にして3億円の借金を背負った。そして2005年にソーシャルメディアビジネスのコンサルティングを行うループス・コミュニケーションズを創業し、現在も経営の指揮を執っている。そんな起業の辛酸を知る斉藤氏の目から見ても、dotの社員は「一般的な起業家とは異なる価値観を持っている」という。

「不思議ですよ。彼らには、起業家特有のギラギラ感がまるで感じられないんです。成功したいとか成り上がりたいとかそういう欲ではなく、居心地の良さを求めて組織を作っている」(斉藤氏)