大学4年生でdotを起業した代表取締役の冨田侑希氏に起業した理由を尋ねても、「就職活動に違和感を感じていたんです。このまま就職するのではなく、とんとん(斉藤氏の愛称)やゼミの仲間と一緒に学び続けた方が成長できると感じたから」と笑顔で語る。

 どうしても起業したいわけでないが、就職したいわけでもない。ただ、自分たちの居場所を失いたくない——そんな悩みをゼミの担当教授である斉藤氏に相談し、自主ゼミを会社にするという異例の決断を下したのだ。

大企業がこぞって活用する理由

 一般的な企業が必ず持っている、ビジョンや解決したい課題がない。そんな新しい価値観を持って起業したdot。その不思議な集団に、二度の起業経験があり、世界中の組織を研究するライフワークを持つ斎藤氏の知見が加わることで、dotは独自の成長を遂げてきた。

dotの主要メンバーと斉藤氏 Photo by Y.U.

 dotは現在、3つの事業を展開している。Z世代が企業の課題解決や新商品提案を考える「Z世代会議」、社長に対して学生が直接プレゼンできる「Z-1チャレンジ」、企業の会議に潜入し、絵や図表を交えながらリアルタイムで議事録をしていく「dotグラレコ」だ。

 Z世代会議は、企業の課題や新規事業について学生が自由に意見を交わし、提案できる事業だ。学生と企業がインターンシップや面接で関わる場合、選考が絡むため、学生たちはどうしても本音を言いにくくなってしまう。しかし、Z世代会議は、選考要素のない環境で社会人と意見が交わせるため、学生たちからすると、貴重な学びの場となる。また、dotの学生同士は普段から交流があるため、企業の担当者がその場にいても、友人と会話するのと同様の雰囲気を作ることができ、率直な意見が出てきやすい。企業にとっても、リアルなZ世代の声を聞くことができるので、メリットは大きいのだ。

「学生側の応募も、すぐ定員オーバーになるくらい人気です。これまで、朝日新聞や講談社、パナソニックなどの大企業にご活用いただき、満足度は上々。企業の担当者からは『社会人では思いつかない“目からウロコ”なアイデアを得られた』と喜びの声をいただいています」(冨田氏)

「結果」よりも「関係」優先

 3つの事業に共通しているのは、「結果を求めないこと」だと冨田氏は言う。そこには、斎藤氏のこだわりが反映されている。

ダニエル・キム「成功循環モデル」 提供:dot
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 斉藤氏は、dotメンバーがビジネスを考える際に、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱する「成功循環モデル」を用いてアドバイスしている。本来組織とは、「関係」「思考」「行動」「結果」の4ステップで、サイクルを回していくものだ。しかし、このステップの順番によって、成功するか失敗するかが大きく変わってくるという考え方だ。成功するポイントは、「発想の起点を結果に求めるか、関係に求めるか」だと斉藤氏は主張する。

「経営者の多くは、“結果を出すためにどうするか”という結果起点に陥りがちです。そうではなく、チームで話し合い、自発的にやりたいことを生み出せる“関係作り”から始めることが、成功につながるのです」(斉藤氏)