組織の土壌を作ること

 dotの組織体の大きな特徴は「土壌作り」にあると斉藤氏は言う。

「植物というのは、土壌が悪いと育ちませんよね。組織も同様に、土壌となる文化や人間関係が良くないと継続的な成果は生まれません。だからこそ、豊かな組織を作るためには、土壌を作り上げることが最も重要なんです。いきなり売り上げや成果を追い求めてしまっては、土壌は疲弊してすぐに枯れてしまいますから」(斉藤氏)

 dotは起業してから半年間、学生を集めて組織の土壌を作ることに集中しており、利益を生むビジネスは1つも行わなかった。

「そもそも事業がやりたくて起業したわけではないので、みんなが集まりたいと思える場所を作ることに集中していたら、いつの間にか赤字になって、資金も枯渇寸前になってしまいました。実はこれが、起業してから一番の大ピンチだったんです。でも、とんとん(斉藤氏)に相談したら、『苦しい時こそ学習のチャンス。押し売り営業をするのではなく、まず自分たちの価値を知ろう』とアドバイスをもらいました。その言葉のおかげで改めて、どうすれば組織の居心地が良くなり、自分たちも楽しくいられるかを、ひたすら考えた上で事業を作ろうと思いました」(冨田氏)

 その結果、いっそう土壌づくりに精を上げ、「内面の豊かさが持続的な幸せにつながる」「賢い自分を作るよりありのままの自分でいる」「利益より学びを優先させる」など、dotオリジナルの文化や考え方が醸成されていった。次第に、意見を安心して言うことができ、認め合える信頼関係ができあがり、アイデアが活発に飛び交うようになった。アイデアは少しずつ大きくなり、最終的にdotの主力事業になっていったのだ。

 dotの創業から現在に至るストーリーの詳細はこちらにまとまっている。

“仕事っぽさ”のないカルチャー

 斉藤氏は、常にdotをよりよい組織に成長させるため、自身の知見を使って、ある種実験的に日々新しい組織改革を取り入れてきた。

「利益の発生に伴い、利益や経費、社員の給与を、学生も社員も関係なくオープンにしました。そうすることで、社員の責任感が増したと思います。また、学生への支払いは全てQuoカードに統一しています。現金を渡してしまうと報酬を得るために行動するようになってしまう。直接的な報酬と距離を置くことで、成功循環モデルに近づけるようにしています」(斉藤氏)

dotが活動する様子 Photo by Y.U.

 その甲斐あってか、dotメンバーの活動を見ると、“仕事っぽさ”が全くない。社員も学生もお菓子を食べながら、和気あいあいと意見を出し合い、それが自然とビジネスになっていくのだ。また、ミーティングや合宿などへの参加は、強制ではなくメンバーの意志に任せている。

「結果を先に求めると、“やりたくないこと”や“やらなければいけないこと”がどんどん増えていく。そうすると、メンバーはどんどん受動的になり、悪循環に陥ります。だから、dotでは活動を強制しません。あくまで、メンバーの自発的な交流やアイデアを起点に、活動しているんです」(冨田氏)

「利益を追い求めず、予算目標すらない。もちろん営業もしていません。それなのに2019年度はすでに1000万円近く利益が出ていて、不思議に思うほどです」と語る斉藤氏。

 Z世代らしい居心地を大切にするカルチャーと、斉藤氏の組織論がうまく融合し、化学変化を起こしているのがdotなのだ。居心地の良い土壌を育てる独自の組織は、まさしく新しい時代の先駆けだと言えるだろう。