橘玲の世界投資見聞録 2019年11月29日

コーカサス三国(アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア)は
それぞれ複雑な歴史を持つが、治安はよくワインや料理も
美味しく、春か秋に旅したいエリア
【橘玲の世界投資見聞録】

 イランを旅したあと、6泊7日の旅程でアゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアのコーカサス三国を訪れた。あまり知られていないが(というか私も知らなかったが)、イランとアゼルバイジャン、アルメニアは国境を接していて、テヘランからアゼルバイジャンのバクーまでは1時間20分のフライトだ。――テヘランからアルメニアのエレヴァンへのフライトもあるようだが、これはイランの航空会社が就航しているので詳細はよくわからなかった。

[参考記事]
●長い歴史と伝統をもつイランを旅するなら5月に南部を中心に8泊9日の日程がお勧め。ただしお酒もSNSもクレジットカードもNG

 コーカサス(Caucasus)はロシア語で「カフカス」とも呼ばれ、黒海とカスピ海のあいだを東西に走るコーカサス山脈一帯を指す。古来、コーカサス山脈がヨーロッパ(北コーカサス)とアジア(南コーカサス)の境界とされてきた。現在、北コーカサスはロシア領で、コーカサス三国は南コーカサスに位置する。

 コーカサスをめぐる複雑な歴史についてはあらためて述べるとして、忘れないうちに旅の感想を書いておきたい。

コーカサス山脈(ジョージア)      (Photo:ⒸAlt Invest Com)

 

コーカサス三国は民族の興亡で領土が複雑に入り組んでいる

 南コーカサスはメソポタミア文明の周縁に位置し、紀元前はアケメネス朝ペルシアの一部だった。その後、黒海南岸に入植したギリシアの影響を受け、ローマ(ビザンチン帝国)の支配下になったのち、支配者はオスマン帝国に変わり、やがて北からロシア帝国が進出してくる。

 大国の利害衝突の影響を受け、アゼルバイジャンは北(ロシア―ソ連)と南(ペルシア―イラン)に分断され、本国の1000万人よりも多い1500万とも2000万ともいわれるアゼルバイジャン人がイラン北部に暮らしている。アルメニアは東(オスマン帝国―トルコ)と西(ロシア―ソ連)に分断され、19世紀末にはオスマン帝国領内からの強制移住の悲劇に見舞われた。

 コーカサス三国の旅でまず頭に入れておかなくてはならないのは、民族の興亡で領土が複雑に入り組んだ結果、旅のルートに制約があることだ。ナゴルノ・カラバフをめぐる領土問題でアゼルバイジャンの国土の約2割をアルメニアが実効支配しており、両国のあいだに国交はなく陸路でも空路でも行き来できない。

 そのため、三国を周遊しようとすれば、どちらの国とも国境を接するジョージアを間に入れて、「アゼルバイジャン―ジョージア―アルメニア」あるいは「アルメニア―ジョージア―アゼルバイジャン」のいずれかのルートを選ぶことになる。

 バクー(アゼルバイジャン)とトビリシ(ジョージア)間はアゼルバイジャン航空が1日2便の定期便を就航していて所要1時間10分。夜行列車もあって、これは格安旅行をするひとたちに人気が高い。夜9時50分にバクー駅を出発し、午前7時から10時のあいだに入国・出国審査をし、11時にトビリシ駅に到着する13時間の旅だ。マイクロバスで国境を越えることもできるらしいが、これはさらにディープなバックパッカー向けだ。

 それ以外だと、バクーからトビリシまでドライバーと車をチャーターすることもできるようだ。ジョージアの業者に聞いたら約8時間で費用は300ドルといわれたから、2人なら飛行機とほとんど変わらない。夜行列車では外は暗闇で、マイクロバスを使うのは難易度が高いから、景色を見ながら旅したいなら一考の価値はありそうだ。

 トビリシ(ジョージア)とエレヴァン(アルメニア)の間は1日1便の定期便が就航していて所要30分。マイクロバス(所要6時間)は1日5便出ていて、約1000円と安いこともあって広く利用されている。ただし予約はできず、満席になると2時間後の次のバスを待たなくてはならない。

 最初はマイクロバスで国境を越える予定だったが、前日に観光で車をチャーターしたとき、「それはバックパッカーがやることで、君みたいな旅行者はマイクロバスは使わないよ」といわれ、それもそうだと思って彼の車でエレヴァンのホテルまで連れていってもらった。車窓から景色を眺めながらの快適な旅(車種はプリウス)で200ドルだから、やはり2人なら飛行機代とほぼ同じだ。

 ジョージアとアルメニアは日本人旅行者はビザ免除で、アゼルバイジャンのみビザ(ASAN VISA)が必要だが空港で無料で取得できる。入国審査の手前にATMのようなマシンがあって、そこでパスポートをスキャンし、ホテルの住所やメールアドレス、電話番号などを入力するとビザがプリントアウトされる。係員が丁寧に教えてくれるので、手続きはかんたんだ(陸路で国境を越える際は、入出国の審査で1~3時間くらいかかることがある)。

 アゼルバイジャンの通貨はマナト(1マナト≒64円)、ジョージアはラリ(1ラリ≒36円)、アルメニアはドラム(1ドラム≒0.23円)。どこでもクレジットカードが使えるから多額の現金は必要ない。空港のATMなどでは現地通貨と米ドルが選択できるようになっており、ドルも広く流通している。土産物店や旅行会社では、わざわざ現地通貨を下ろすより米ドル現金で支払ったほうが便利だ。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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