橘玲の世界投資見聞録 2019年11月29日

コーカサス三国(アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア)は
それぞれ複雑な歴史を持つが、治安はよくワインや料理も
美味しく、春か秋に旅したいエリア
【橘玲の世界投資見聞録】

 

アゼルバイジャンはもっとも開放的なイスラーム国家

 アゼルバイジャンは国民の95%がムスリム(シーア派85%、スンニ派15%)だが、ソ連時代が長かったからか世俗化が進んでいて、首都バクーではヒジャブ姿の女性は2~3割しかいない。テヘランからバクーに向かうと、飛行機が離陸したとたん女性たちがヒジャブを取ってバッグに入れる姿を目にすることになる。ソ連時代の(よい)影響だろうが、女性の就労率も高く、建設現場で働く女性も見かけた。これはさすがに珍しいと思うが、ホテルのロビーでミニスカート姿の女性を見たときは驚いた。

バクーの街で見かけた建設現場で働く女性たち。他のイスラームの国では考えられない  (Photo:ⒸAlt Invest Com)

 

 空港の入国審査と出るといきなりワインがずらりと並んだ店があるように、アゼルバイジャンはワインの産地としても有名。深夜にバクーに着いたのだが、ホテルのバーは24時間やっていた。

 ドバイのような「開放的」なイスラームの都市でも一般のレストランは酒類を出さないし、外資系のホテルでも、テラス席のような外から見えるところでは飲酒できない。アゼルバイジャンはこうした制限はいっさいなく、地元のひともカフェのテラスで当たり前のようにワインを楽しんでいる。

 アゼルバイジャンは旧ソ連から独立後、カスピ海の石油や天然ガスによって資源バブルに湧き、バクーには高層ビルや高級ホテルが次々と建てられた。そんなユーフォリアのなかでひとびとの意識や価値観も変わったのだろうが、イランからアゼルバイジャンに来るとその落差に愕然とする。

バクー新市街の超高層ビル     (Photo:ⒸAlt Invest Com)

 

 アゼルバイジャン観光は、いまのところカスピ海に面したバクーとその周辺が中心で、地方まで足を延ばす旅行者は多くない。旧市街にはシルヴァンシャフ宮殿、ムハンマド・モスク、乙女の塔の3つの世界遺産があり徒歩で回れる。

 シルヴァンシャフ宮殿は15世紀から16世紀にかけてこの地を支配していた一族の宮殿で、霊廟や浴場跡などの建物が複雑に配置されている。宮殿に隣接するムハンマド・モスクは11世紀に創建された城内最古のミナレットを持つモスク。

 乙女の塔は「グズガラスゥ」とも呼ばれるバクーのシンボルで、紀元前5世紀に拝火教(ゾロアスター教)の寺院として最初の塔が建てられたともいう。その後、要塞として使われ、12世紀に現在の高さ30メートルの塔が建てられた。

世界遺産、乙女の塔      (Photo:ⒸAlt Invest Com)

 

 塔の名前の由来は諸説あるが、望まない結婚を強いられた王女がこの塔から身投げしたからとも伝えられている。塔の最上部の展望台からはカスピ海が一望できる。

 私は2018年のロシア旅行でソチとクリミア半島のセバストポリを訪れてはじめて黒海を目にしたが、ロシア、イラン、カザフスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャンの5カ国に囲まれたカスピ海を一般の旅行者が見る機会はさらに少ない。ロシアのカスピ海沿岸にはリゾート地はないし、イラン、カザフスタン、トルクメニスタンは自由な旅行が難しいから、いまのところ世界最大の湖(国際法上は2018年に「海」とされた)を眺めるのはバクーがいちばん現実的だ。

 イランでは日本人旅行者に会うことはなかったが、アゼルバイジャンでは若い日本人のカップルや女性の旅行者を見かけた。カップルからは、カスピ海を背にした記念写真を頼まれた。若いひとたちのあいだでカスピ海が人気なのだろうか。

バクー新市街の高台からカスピ海を望む    (Photo:ⒸAlt Invest Com)

 

 バクー郊外には油田地帯が広がっており、そのなかに拝火教寺院がある。古代アゼルバイジャンはペルシアの支配下にあり、かつてはゾロアスター教が信仰されていた。イスラーム到来によって信者の多くはインドに移住したが貿易などで関係はつづき、17世紀にこの地に住んでいたインドのゾロアスター教徒の商人によって寺院が建立された。そんな由来があるからか、インドからのツアー客がたくさん訪れていた。

 寺院の近くには、1950年代に羊飼いが捨てたタバコの火が地表から漏れ出た天然ガスに引火し、そのまま燃えつづけるヤナル・ダクや、12カ国共同開催となったユーロ2020(UEFA欧州選手権)の会場となるスタジアムなどの観光スポットがある。すべて回って車で3時間ほどで、タクシーをチャーターして2000~3000円だ。訪れてはいないが、バクーの南西50キロほどのところに、世界遺産に指定されている石器時代の遺跡群ゴブスタンがある。

ソロアスター教寺院      (Photo:ⒸAlt Invest Com)

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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