本田技術研究所 常務取締役 ライフクリエーションセンター長、板井義春本田技術研究所 常務取締役 ライフクリエーションセンター長、板井義春氏 Photo by Kenji Momota

 ホンダの「ライフクリエーションセンター」。

 今年(2019年)4月1日、本田技術研究所に新設された部門名称である。

 耕運機、発電機、除雪機などパワープロダクツ開発と、ASIMO(アシモ)などロボティクス研究が融合したかたちだ。

 ホンダの事業といえば、四輪と二輪が中心で、実質的に「その他」に分類されてきた印象があるパワープロダクツ。なぜこのタイミングで、最新技術領域を取り込む大規模な組織再編に至り、一気に“陽の当たる場所”に躍り出たのか?

 その狙いについて、本田技術研究所 常務取締役・ライフクリエーションセンター長の板井義春氏に詳しく聞いた。

旧来型の“商品を測るものさし”が通用しない
危機感の中でライフクリエーションに光明あるか?

――まず、お聞きしたい。「いまのホンダ」をどう見るか?

 非常に厳しい状況に置かれている。(この点について)青山(本社)の役員室とも危機感は共有している。ただし(ホンダ関連の各部署などの)役割によって、危機感の感じ方、何がどう危機なのかという点では少なからず違っている。(その上で)研究所にいる立場としては、(創業以来これまで培ってきた)二輪、四輪での走る・乗る楽しみという旧来型の「商品を測るものさし」が今後の研究開発でも通用するのか、という危機感がある。これまでは、ホンダらしさを象徴する中核事業であるエンジンについて、レースを通じて走る実験室として、次の技術を培ってきた。

 それが、ホンダの(企業としての)姿かたちだった。だが、(近年になり)デジタル化が世の中を大きく変えた。さらに、電動化によって(エンジンと比べて移動体に対する)エネルギーのマネジメントがしやすくなってきた。(こうした世の中での)自動車に対する価値の変化をどう乗り切るのか、ホンダのみならず自動車産業全体として、将来進むべき道を模索しているという危機感がある中、ホンダとしての将来像をまだ見いだせていない。