国勢調査は、10月1日の午前0時に住んでいた場所で行われる。9月30日の夜に東京に引っ越してきて、住民登録がまだ済んでいない人も、れっきとした東京都民だ。

 その時入院していたらどうなるのか。短期の入院なら自宅を住所とするが、3ヵ月以上の長期入院者は病院で暮らしていたとみなされる。こうした人たちは、一般の世帯とは異なり「施設等の世帯」に分類される。

「塀の向こう」も国勢調査

 施設等の世帯で暮らす人(以下、「施設等の世帯人員」という)は、全国総合計で251万人。人口が47都道府県中14位の新潟県を上回る。

 東京23区では9万3000人。人口1000人あたりの割合(単位は‰〈パーミル〉)は10.4‰に止まるが、実数は中堅市並みの規模だから無視して済ませる数ではない。

 23区の中で、人口あたりの施設等の世帯人員の割合が高いのは、台東区を筆頭に、文京区、板橋区、葛飾区、新宿区と続く。一見する限り、これら各区に共通性は見当たらない。実は、一括りに施設等の世帯といっても、その内容はさまざまであり、分けてみないと実態がつかめないからだ。

寮や病院から自衛隊営舎まで<br />9万人が住む「施設等の世帯」が多い街【図1】人口1000人あたりの施設等の世帯人員の割合
  資料:総務省統計局「国勢調査」より作成
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