「麻布→東大卒」でありながら「プロゲーマー」という経歴が、世間の話題となったときどさん。しかし順風満帆だった彼のプロゲーマー人生は、ゲーマー20年目の2013年ごろに壁にぶつかった。格闘ゲームのeスポーツ化による環境の変化によって、全く勝てなくなったのだ。
2冊目の著書『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』では、そのV字回復の軌跡を紹介しながら、ときどさんが毎日やっている「努力のやり方」を紹介している。「圧倒的に変化が激しい」eスポーツの世界で戦うために、必要なこととは何か。ビジネスマンにも役立つエッセンスを語ってもらった。

結果を出す人が「偶然うまくいったこと」を喜ばないワケPhoto: Adobe Stock

eスポーツの「変化が激しい」は桁外れ

 僕は著書『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』で「変化が激しい」という言葉を何度も使っています。eスポーツ業界で戦うことは、変化と戦うことに等しいともいえます。

 その中でも最も対処が難しいのが「メーカー側によるルールの変更」です。
 例えば将棋であれば、ルールがころころと変化するようなことはありません。将棋で持ち駒の使用が禁止されたり、二歩が許されるような変化は起こりませんし、香車が斜めに移動することはありません。

 ところがeスポーツではそのようなことが起こり得ます。
 なぜか。理由は「ゲームだから」です。「ゲームだからいい加減」といった否定的な意味ではありません。もともと遊ぶためのものなので、メーカー側からすると、ゲームを面白くするためならやる、というのが基本の考え方なのです。企業にとってはひとつの商品なので、変化をつけることで消費者を飽きさせない狙いもあるでしょう。

 しかも、ルール変更(業界では「調整」と呼ばれます)の頻度は、今と昔で比べる
とかなり高まっています。ゲームセンターが中心だった時代は一度出したゲームは基本的には調整されませんでした。同じシリーズでも別の製品として続編をリリースし、その中でシステムやキャラクターを調整するやり方でした。

 「ストリートファイター IIIシリーズ」であれば「ストリートファイター III−NEW GENERATION(1作目)」「ストリートファイターIII 2nd IMPACT(2作目)」「ストリートファイターIII 3rd STRIKE(3作目)」と、それぞれ別の作品として商品化されました。これら新作のリリースのタイミングで、ゲームシステムやキャラクター性能の変更、キャラクターの追加などのルール変更がありました。1作目が1997年2月、最後の3作目が1999年5月発売なので、約2年の間に3作が発売され、2回の調整が行われたことになります。

 一方、現在ではオンライン上でデータをアップデートすることにより、ゲーム内容をいつでも変更できます。現行の「ストリートファイターVシリーズ」は2016年2月に発売され、2019年の現在まで続いていますが、その間に細かいものを入れると約20回もの調整がありました。