2019年も残すところあと5日。今年は平成から令和への改元の年であり、平成という時代を振り返ることの多い一年だった。そんな中、テレビドラマ界にも大きなニュースがあった。平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」の続編放映が決定したのだ。

「倍返しだ!」で日本中を熱狂させた「半沢直樹」続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。さらにはその序章として『半沢直樹イヤー記念・エピソードゼロ ~狙われた半沢直樹のパスワード~』が年明け早々の1月3日(金)よる11:15から放映されることも発表された。今年もっとも活躍した俳優のひとり、吉沢亮ほか豪華キャストの出演が話題となっている。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年3月末まで

第一章 椅子取りゲーム

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 電脳雑伎集団の平山が夫婦で訪ねてきたのは、十月のとある月曜日のことであった。
 二〇〇四年、米大リーグでジョージ・シスラーの持つ年間最多安打記録をイチローが破った翌週のことである。

 半沢直樹が、重要な顧客だけが通される第一応接室に出向いたとき、すでに次長の諸田祥一と森山雅弘のふたりがいて、IT企業の電脳雑伎集団を率いる平山一正社長と、その妻で同社副社長の美幸夫人の相手をしていた。

 電脳雑伎集団は、平山が三十五歳のとき、それまで勤務していた総合商社を辞して創業したベンチャー企業であった。中国企業を連想させる社名は、かつて中国雑伎団によるアクロバティックな演技を見て感動した平山が、IT分野でも同じ超絶技巧を駆使するプロ集団をイメージして命名したものだ。

 株式を新興市場に上場したのが創業五年目。この時点で、平山は巨額の創業者利益を得て、日本の起業家のいわばスター的な存在にまでのし上がり、いまやその世界では知らぬ者のない有名人になっている。

 今年五十歳になる平山はサラリーマン時代を彷彿とさせる地味なスーツ姿だが、一方の美幸は、ひと目でそれとわかる派手なブランド物の服に身を包んでいた。

 半沢が来る前にいい話でもあったのか、いま諸田が期待に顔を輝かせ、肘掛け椅子を半沢に勧めた。その諸田の横では、森山が、いつもの仏頂面でノートを広げ、ボールペンを構えている。

「こちらからまたご挨拶にお伺いしようと思っていたところです。わざわざお越しいただきまして、ありがとうございます」

 半沢は礼をいった。平山とは、それまで勤務していた東京中央銀行からこの東京セントラル証券へ出向を命じられた二ヵ月前に部長就任挨拶で初めて会社を訪ねたとき以来である。

 重要な顧客という位置付けにはなっているものの、電脳雑伎集団との関係は鳴かず飛ばずで、上場時の主幹事を務めたのを最後にさしたる取引実績がない。担当の森山を通じて様々な商品を持ち込んでも、ことごとく門前払いを食らわされているといった状況であった。

「重要なお話なので、部長にもぜひ、同席していただきたいとのことです」