15兆円の洋上風力バブル_02Photo:Natdanai Pankong/EyeEm/gettyimages、wx-bradwang/gettyimages

なぜ今、洋上風力発電が“バブル”を迎えているのか。そこには、島国である日本独特の理由があった。特集「15兆円の洋上風力バブル」(全5回)の#02では、洋上風力発電のメリット、デメリットを徹底解説する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

陸の太陽光でバブルがはじけ
海の洋上風力に開発マネー

 米週刊ニュース雑誌「タイム」の「今年の人」に史上最年少の16歳で選出されたスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん。彼女は今年9月の国連気候行動サミットにおいて、「How dare you!(よくもそんなことをしてくれた)」と怒りで目に涙をためながら演説したことで一躍、時の人となった。

 16歳の少女が訴えるのは、ほかでもない、地球温暖化の防止だ。つまり、二酸化炭素(CO2)の排出を抑えることである。

 CO2の排出を抑える手段として最も手っ取り早いのは、CO2を排出しない再生可能エネルギーの導入を拡大することだ。再エネには太陽光、風力、地熱、バイオマスといった種類がある。

 東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故後、日本は再エネの導入を促進した。そこで迎えたのが、“太陽光バブル”である。

 2012年に太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)が始まり、当時の原発の発電単価に比べて4倍近い買い取り価格が設定された。これにより、全国の至る所で太陽光パネルが設置された。太陽光発電の導入量は今年6月時点で、FIT導入前に比べて10倍近い、5130万kWまで急激に伸びた。

 太陽光パネルの素材価格は徐々に下落した。これに伴い、FITの買い取り価格も下がり、現在では原発の発電コストを下回るケースも出始めた。買い取り価格が下がると、コスト削減に対応できないプレーヤーにとっては、太陽光発電のうまみがなくなった。そして、太陽光バブルははじけた。

 政府は第5次エネルギー基本計画で再エネを「主力電源」と位置付け、まだまだ拡大する方針を打ち出している。しかし、島国で国土が狭い日本の陸地には、太陽光発電や陸上風力発電を開発できる場所が、もはや残されていない。

 再エネを伸ばすには海に出なければならず、おのずと選択肢は洋上風力発電しかない。発電した電力はFITで買い取る方針は決まっているので、ある程度のうまみが見込める。

 故に、洋上風力発電は再エネの“最後の楽園”といわれ、開発マネーが押し寄せているのだ。

 では、洋上風力発電は太陽光発電よりもエコなのか。原発よりコストが安いのか。