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獣姦と動物性愛は
似て非なるもの

『聖なるズー』書影
『聖なるズー』 濱野ちひろ著 集英社刊 1600円+税

 今年度の開高健ノンフィクション賞を受賞した傑作だ。京都大学大学院で「文化人類学におけるセクシュアリティ研究」に取り組む女性が、単身ドイツに渡り、複数の動物性愛者(ズー)の家を泊まり歩いて丹念に取材している。最初私は「動物性愛」ときいて腰が引けたが、興味が打ち勝って本書『聖なるズー』を開いた。すると、こんな書き出しが待っていた。

“私には愛がわからない。
ひと口に愛といっても、いろいろなかたちがあるだろう。”

 この書き出しに続いて、長年受けてきた性暴力についての著者の自分語りが始まる。それは、動物性愛研究の動機でもあり、また、著者がズーの本質に迫ることができた理由でもある。本書には欠かせない告白だ。このプロローグを読めば、異種間の性に対する興味本位の本ではないことがわかり、私は思わず引きこまれてしまった。

 異種間の性といっても、獣姦と動物性愛が似て非なるものであることを、最初に断っておかなければならない。ときに暴力的な行為も含む獣姦との違いを認識したうえで、著者はドイツに渡っている。でなければ、携帯もつながらない田舎町の独身男性宅に何泊もするのは、リスクが高すぎるだろう。獣姦と動物性愛の違いについて、本書から引用する。