いよいよ最終回を迎える『グランメゾン東京』。ドラマをさらにディープに楽しむために、フランス料理の奥深い世界を中心に、「ちょい足し解説」で推理してみた。(マーケティングコンサルタント 新山勝利)

「エスコフィユ」は
実在の人物の名前である

フランス料理フランス料理についての知識を少し持っておくだけで、『グランメゾン東京』がさらに楽しく観れる Photo:PIXTA

 木村拓哉さんが主演のTBS系ドラマ『グランメゾン東京』が、いよいよ最終回をむかえる。

 主役の木村さんが演じるのは、型破りなフランス料理のシェフ・尾花夏樹だ。

 パリに自身の店を持ち、ミシュラン・ガイドで2つ星まで獲得した尾花だったが、ある事件で挫折、店も仲間もすべて失う。奈落の底に落ちたが、今度は東京で、世界最高峰の3つ星レストラン「グランメゾン東京」を作るために奮闘する姿を描く大人の青春ストーリーだ。

 フランス料理の奥深い世界は、日本人にはなじみが薄い。最終回をさらに楽しむため、各話に登場するフランス料理や厨房の背景について、少し解説を試みたい。
 
第1話:
 ドラマ冒頭に、「最後の晩餐」の絵が映り込む場面がある。この絵画はこれから起こるイエス・キリストの受難を示唆しており、この晩餐のなかに裏切り者がいる場面が描かれている。尾花に降りかかる「ナッツ混入アレルギー事件」(首脳会談時に、フランス外務大臣のアレルギー食材であるナッツオイルを何者かが入れたことで卒倒してしまい、重篤な状態に陥る)で、パリのレストランが閉店に追い込まれる。犯人が誰なのかがストーリー展開の主軸にもなっており、このなかに裏切り者であるユダがいることを暗示している。

 その尾花が経営するパリのレストランの名前は、「エスコフィユ」だ。フランス料理に関わったことがあれば、この名前はオーギュスト・エスコフィユを指すことがわかる。

 20世紀初頭に活躍したシェフであり、「近代フランス料理の皇帝」と呼ばれている。厨房での役割分担を構築、コース料理スタイルの確立など、現代フランス料理の礎を作り出した。彼の著書『料理の手引き』はフランス料理のレシピが収録されており、現在もなお基礎を学ぶ上で必須の教科書になっている。

 第7話で尾花は、「グランメゾン東京はエスコフィユを超える」と発言したが、そのエスコフィユが店ではなく人のことだとすると、かなりのビッグマウスである。