こんにちは2020年!「半沢直樹」イヤーの幕開けを記念して、続編ドラマの原作を限定公開!

平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。さらには本編の序章として『半沢直樹イヤー記念・エピソードゼロ ~狙われた半沢直樹のパスワード~』が明後日の1月3日(金)よる11:15から放映されることも発表され、豪華キャストの出演が話題だ。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年3月末まで

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 信用取引で大損をしたヨースケの父親は、預金をはたいただけでは足りず、家まで売って、その損失の穴埋めをせざるを得なくなったのだ。それだけなら、ヨースケは学校を辞めなくてもよかったかも知れない。悪いことに、ヨースケの父親はその損失を取り戻そうとして、さらに損失を拡大させていった。

 森山が一番親しくしていた友達は学校を去り、どこか知らない町へと引っ越していった。それ以来、ヨースケとの連絡はぷっつりと途絶えたまま、いまに至っている。

 株価は、その前年、つまり平成元年十二月の大納会に日経平均約三万八千円の市場最高値を付けた後、下落に次ぐ下落を続けていた。ヨースケの事件をきっかけに新聞の株式欄を見るようになった森山が、生き物のように揺れ動くチャートにある種の畏怖と魅力を感じたのもそのときであった。こうした経験が後々、大学を卒業するとき証券会社を目指すきっかけになったことは否定しない。

 ヨースケだけでなく、高校二年に上がるまでに、何人ものクラスメートが親の都合で学校を去ったことは、忘れ得ぬ出来事として森山の心に刻み込まれた。生徒の間にあふれていた、ある種能天気で、景気のいい話はとんときかれなくなり、世の中全体が長患いの家族でも抱えているかのように暗く、沈んでいく。

 その一方で、森山自身、少なからぬ大人たちがそう思っていたように、この不況は一時的なものに過ぎず、すぐに元の好景気が再来するのではないかという期待を持たないではなかった。

 しかし、それはまったく根拠のない希望的観測に過ぎなかった。どれだけ待っても、また期待しても、景気は一向に回復する気配を見せなかったのだ。株価も地価も下落を続け、不景気という名の怪獣の長い尻尾は、ついに森山が大学を卒業するときまで、いやそれ以降も、就職難という形で、立ちはだかったのである。

 就職氷河期の真っ只中に就職活動をすることを強いられた森山は、数十社にもおよぶ面接を受けて、落ちた。

 就職が厳しいことはわかっていたから、学生時代から自己啓発に努め、英会話だけではなく証券アナリスト試験などの資格を得るための勉強にも余念がなかったつもりだ。授業はほとんど皆勤。成績はほとんど「優」──それでも落とされる。

 なんで落とされたのか、理由が判然としないことも多かった。

 不可解というより、理不尽。

 相次ぐ不採用の知らせに、森山の腹に渦巻いたのは、やり場のない怒りだった。

 森山の中学から高校にかけての好景気がバブルと呼ばれ、その後の不景気がバブル崩壊と名付けられたのもこの頃であった。

「泡」と形容されるほど、奇妙な時代を作り上げ、崩壊させたのは誰なのか?

 その張本人は特定できないが、少なくとも森山たちの世代ではない。なのに、満足な就職もできずに、割を食っているのは自分たちなのだ。