2020年、「半沢直樹」イヤーがついに幕開け!

平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。さらには本編の序章として『半沢直樹イヤー記念・エピソードゼロ ~狙われた半沢直樹のパスワード~』が明日1月3日(金)よる11:15から放映されることも発表され、豪華キャストの出演が話題だ。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年6月末まで

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「会社は会社、オレはオレですよ」

 森山は薄暗い店内の壁の、なんでもない壁の一点を見据えていった。その言葉は尾西に、というより自分に言い聞かせ念じる呪文のようだ。

 しばらくすると、

「オレもそう思う」

 妙に納得顔でうなずいて、尾西がいった。「半沢部長にせよ、諸田次長にせよ、あのアホの三木にせよ、個別の能力ではオレたちよりも劣るのに、会社組織という仕組みがあるからこそ、上司面してオレたちに指図する立場にいる。それだけのことなんだよ。あの連中から会社の肩書を外したら、なんにも残らない。あの連中が会社から去らない限り、真の実力で勝負する会社組織は実現しないんだ」

 尾西は、まるで反政府革命を起こす闘士のような口調でいった。「それまでは、能力のない連中を食わせるために、見合わない人件費を払い続けて競合他社と渡り合わなきゃいけない。もっとも、その事情はどの会社だって同じかも知れないけどな。バブル世代は、会社という枠組みを超え、いまや世の中の穀潰し世代なのさ。まさに社会問題そのものだ」

 結局、どこまでいっても割を食うのはオレたちロスジェネ世代だ──そう森山は確信した。

3

「概算で千五百億円の買収金額となると、収益は相当なものが見込めるんだよな」

 電脳雑技集団とのアドバイザー契約を締結した日、東京セントラル証券社長の岡光秀の機嫌は上々であった。調印のために社長室を訪れたときのことである。

 東京中央銀行の専務取締役だった岡が、頭取の椅子を巡る出世競争に敗れて現職に就いたのは、一年前のことであった。

 上昇志向の塊で負けず嫌い。感情を剥き出しにするタイプで、口癖は、“銀行に負けるな”、だ。
「成功報酬で受注しましたから」

 半沢は、こたえた。

 成功報酬にしようというのは、諸田の提案であった。手数料が高くなる代わり、失敗したら一円にもならないという契約だ。しかし、難航必至のこの案件では、あまりにリスクが高い。難色を示した半沢に、「それでいけ」、と命じたのは他ならぬ岡だった。

 理由はひとつ。企業売買の分野で高収益を上げ、親会社の鼻を明かしたいからだ。