平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年3月末まで

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 その日、室内にはピリピリしたムードが立ちこめていた。

 電脳雑伎集団の会議室だ。中央の席に半沢、その横に次長の諸田がかけ、続いて三木を筆頭とするプロジェクトチームの五人が緊張した面持ちで平山社長の入室を待っている。

 午前十時ぴったりにドアがノックされ、社長の平山が姿を現した。

「副社長は別件がありまして、今日は失礼します」

 開口一番、妻の不在を詫びた平山は、さて、とずらりと並んだ東京セントラル証券のメンバーを眺めた。

「今日はどのような」

 少々意外なひと言が飛び出し、半沢は目を見開いた。買収事案に関わることなのはいうまでもないのに、どのような、はない。

「ご相談いただいている件です」

 半沢はこたえた。「早速、叩き台となる買収案をお持ちしましたので、その内容について説明させていただこうと思いまして」

「ああ、そのことですか」

 平山の唇に困ったような笑いが挟まるのを見た瞬間、半沢は奇妙な違和感にとらわれた。

 このミーティングは、東京スパイラル買収を目標として掲げる平山にしてみれば、待ちかねたもののはずだ。それなのに、いま目の前にいる平山からは、期待も熱意も感じられない。

 半沢が敏感に異変を感じ取ったのと、「その件は、もう結構です」、というまさに驚きの言葉が平山から発せられたのは、ほぼ同時だった。