平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年6月末まで

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「申し訳ありません」

「まったく、とんだ疫病神だ。いつまでも銀行にいた頃のような殿様商売が通用すると思っているからこんなことになるんだ」

 見当違いな批判を口にした岡は、憎々しげな眼差しを半沢に向け、

「この責任は取ってもらうからな」

 そう言い放つと、そっぽを向いてしまった。

 一礼して社長室を後にする半沢に、苦々しい敗北感が込み上げてきた。

 全てがちぐはぐのまま、形になる前に一方的に退場を命じられた──そんな感じだ。

 いまさらいっても仕方がないが、成功報酬型の契約であったことも平山に契約破棄を容易にさせる要因になっていたはずだ。定額報酬を事前に支払う契約なら、途中解約を防げたかも知れない。

 部屋に戻ってしばらくすると、遠慮がちなノックとともに諸田が顔を出した。

「申し訳ありませんでした、部長」

 そういって頭を下げる。

 ──素案ができていたのに、君の指示でやり直しをさせていたそうじゃないか。

 岡のひと言が脳裏をよぎり、そんなことを上申したのは君かと問いたい気持ちになる。

 ──期待していただいて結構です。

 半沢に向かって見得を切った向こう気の強さは跡形なく消え失せ、諸田はいまや保身に汲々としていた。

「もういい」

 それ以上なにもいわず、半沢は立ち上がって諸田に背を向けた。窓から見える晩秋の日射しを受けた大手町界隈に目を細めたとき、ドアの閉まる音とともに諸田が静かに辞去する気配がした。