どの理論から読むのがベストか
読者の最も好きな理論を調査
世界には数多くの経営理論があります。世界中の学者が集まって、大量の実証分析を行って、科学的に解き明かした真理法則ともいえる理論が存在します。ですが、そうした世界標準とも呼べる経営理論の多くは、ビジネスパーソンに伝わっていませんでした。
それを皆さんに直接、届けたいと思っておよそ4年間『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』で連載し、今回のような勉強会をこれまで14回行ってきました。
しかし、経営理論は絶対的な正解を与えるものではありません。そもそも、経営における正解なんてありませんし、おそらくこれから先も見つかることはないでしょう。それでも、考え続けなければなりません。皆さんは、正解のない中で意思決定をして前に進んでいかなければならないのです。
それでは、よりよい意思決定をするためには何を拠りどころとしたらよいのでしょうか。著名な経営者の言葉でもよいですし、自分の尊敬する先輩の言葉でもよいのですが、世界の英知が詰まった経営理論を「思考の軸」として使うのも一つの手ではないでしょうか。経営理論とは、唯一の正解ではなく、複雑なビジネスや組織のメカニズムに「なぜそうなるのか」という切り口を、明快な説明を与えてくれるものだからです。
世界で全く新しい「思考の軸」をつくるための経営理論の教科書、その本を作りたい。そう思ってできたのが『世界標準の経営理論』です。
この本では、約30の理論を取り上げました。ビジネスパーソンの皆さんは、これだけ知っていれば十分です。それでも、800ページ以上になりますから、辞書や事典以外には見かけない分厚さです。書店に並んでいると威圧感すら感じさせます。
驚いたのは、その分厚さが受けていることです。TwitterやInstagramなどのSNS上に、本の厚さを表す写真がどんどんアップされています。例えば、この本と一般の本とを並べて比較したり、この本を立ててペットボトル飲料やみかん、おもちゃ、赤ちゃんなど、さまざまなものと比較したりする人がいます。「(インスタ)映え(す)る」みたいです(笑)。
また、重さが約1キログラムありますから、さすがに持ち運べないと。すると、自宅用とオフィス用で2冊買ったり、一つを裁断して持ち運び用にしてもう1冊を保管用にしたり、電子書籍と紙の本を併せたりと、複数冊需要が生まれています。このような使い方は全く想像していませんでしたが、がんばって定価を2900円に抑えたこともあって、予想以上に売れています。
ただ皆さん、この本を全部読もうとは思わなくて結構です。それぞれの章で完結しているため、どこから読んでも構いません。とてもお忙しいと思いますから、気が向いたときに、気になったところから読み進めていただいて構いません。
そうはいっても、どこから読めばよいのでしょうか。そこで今回、皆さん(※1)を対象に、本に紹介した理論の中から、最もお気に入りの理論がどれかを聞いてみようとアンケートを実施しました。題して「My Favorite 理論」ランキング。その結果をお伝えします。
※1 今回の参加者は、『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』編集部が主催した入山氏の勉強会に過去に参加したことのある方々であり、読者の中でもビジネス経験の豊富な人が多い。