信楽焼のたぬきよろしく真ん丸に張ったおなかに、ブヨブヨにたるんだ三段腹。「おなかが出てきた」といっても、実はぽっこりおなかは十人十色だ。また、ご飯を食べた後にポコッと下腹部が出る、痩せ形の人に多いといわれている内臓下垂(胃下垂)をその原因として問題視する声もあるのだという。ぽっこりおなかのタイプ別のリスクと対策について、医師に聞いた。(清談社 松嶋千春)

「内臓下垂」のせいにしても
ぽっこりおなかはへこまない

おなかの出た男性内臓脂肪と皮下脂肪は、それぞれ減量アプローチが異なる Photo:PIXTA

 内視鏡による消化器検診を専門に行う池袋藤久ビルクリニックのもとには、便秘や膨満感に悩む患者が訪れる。そのなかには、「内臓下垂が原因かもしれない」と自己申告する人もいるというが、同クリニック所長の高橋秀理医師(高の文字は、正式には“はしご高”)は、「内臓下垂自体は病気ではない」と指摘する。

「胃のバリウム検査で胃の位置を確認して『胃下垂』と診断名がつくことはあっても、内視鏡の検査で診断名がつくことはありません。なぜなら、内臓下垂自体は体質の一部であって、病気ではありませんから。わざわざ内臓下垂かどうか調べて治すというものでもありません。皆さん、中年になってから健康や見た目上の症状が現れ始めて、その原因を後付けしている節があります」(高橋医師、以下同)

 同クリニックの利用者は40代以上の男性が多く、大半はメタボリックシンドローム(以下、メタボ)のおなかを抱えてやってくるという。腹腔内についている内臓脂肪の量の基準は、へその高さのCT値で、100平方センチメートル以上。それに該当するかどうかを簡便に判断する基準として腹囲が採用され、男性は腹囲85センチメートル以上、女性は腹囲90センチメートル以上がメタボの基準に該当する。

「男性に多い内臓脂肪の詰まったメタボ腹は、『ビア樽体形』といわれるようにへその上部から全体的にポコッと膨らんでいて、健康上のリスクをはらんでいます。皮下脂肪タイプは重力で下に落ちてくるような脂肪の付き方で、ホルモンの作用により女性に多いです。だんだんおなかが大きくなっていく過程で、全体的にポテッとなるか、下に垂れ下がるか、という違いが生じてきます」