アップルの呪縛 日の丸液晶JDI_PART3_日の丸液晶JDIを潰せない経産省写真:西村尚己/アフロ

経済産業省と官民ファンドのINCJがつくり出した日の丸液晶、ジャパンディスプレイ(JDI)。「日本の技術を結集して勝つ」という設立当初の理念は雲散霧消し、もはや存続の意義が問われている。安易な人事介入で、JDIの経営を混乱させた「官」は、最後まで破綻のボタンを押せずに公的資金漬けのままJDIを放り出した。その経緯を振り返る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

革新機構の人事介入に
異を唱えた社外取締役

 「この会社のガバナンスは壊れている。上場企業の経営に政府はどこまで関与するつもりなのか」

 2017年3月22日。ジャパンディスプレイ(JDI)本社で開かれた取締役会で、社外取締役を務めていた澤部肇・TDK元会長は、筆頭株主の産業革新機構(現INCJ)が突如としてJDIに突き付けた案にかみついた。

 同年6月の株主総会を経て、有機ELの開発を手掛けるJOLED(ジェイオーレッド)社長を務めていた東入來信博氏を最高経営責任者(CEO)にするという人事案だった。

 当時の取締役会では、社長兼最高執行責任者(COO)だった有賀修二氏をCEOに推す意見でまとまっていたが、革新機構はそれを一蹴し、一方的に決めたトップ人事を押し付けようとしていた。

 「これは志賀(俊之)会長の指示による決定事項です。それで取締役会をまとめてください」。革新機構の勝又幹英社長は、当時JDI会長兼CEOだった本間充氏にそう言い放ち、人事案をごり押ししたという。