アップルの呪縛 日の丸液晶JDI_PART2_JDI支援交渉・大混乱の全内幕写真:読売新聞/アフロ

JDIの金融支援交渉は二転三転の末、独立系投資顧問いちごアセットマネジメントの登場で収束に向かった。急転直下の救済劇の裏には、米アップルの支援を引き出すまでの壮絶な駆け引きがあった。その全内幕に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

8カ月の紆余曲折を経て
台中連合と関係解消

 2019年12月12日午前。東京・新橋のジャパンディスプレイ(JDI)本社で、菊岡稔社長はSuwaインベストメントホールディングスの最高経営責任者、ウィンストン・リー氏と向き合っていた。

「月内に出資の提案がなければ交渉を打ち切る」

 JDIは同日午後の取締役会で、Suwaからの出資が12月31日までに実施されなければ、いちごアセットマネジメントと協議を始めると決議した。菊岡社長が午前にリー氏と会ったのは最後通告だった。

 19年4月12日に基本合意した金融支援の枠組みは、台湾・宸鴻光電科技(TPK)、台湾・富邦グループ、中国ファンドの嘉実基金管理(ハーベスト・ファンド・マネジメント)の3社の連合だったが、6月に台湾2社が離脱し、9月になって中国ファンドも離脱。スポンサーが誰もいなくなり、もはや支援連合は崩壊していた。

 JDIは20年1月8日、Suwaとの金融支援契約を解除。こうしてJDIは大混乱の交渉の末、Suwaとの8カ月に及ぶ交渉を打ち切った。

 ここに至るまでJDIの支援交渉が迷走に迷走を重ねた理由は、Suwaという支援連合が発足した経緯までさかのぼる必要がある。