平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年6月末まで

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「速いな。さすがですね」

 賛辞を当然のごとく受け止め、「野崎君」、と伊佐山は隣席の部下を促す。

 野崎は、膝の上に置いた茶封筒から取り出した提案書を平山と美幸に一部ずつ手渡した。

「これからご説明するのは、東京スパイラル買収スキームの第一段階です。概要を申し上げます。電脳雑伎集団は、まず総資金七百億円をかけ、東京スパイラル発行株式の約三十パーセント弱を取得します」

 野崎は続ける。「──この三十パーセント弱の株式取得は、東京スパイラルに知られることのない、いわば水面下での買収になります。彼等が気付いたとき、御社は東京スパイラルの大株主に躍り出ていることでしょう」

 提案書を眺めていた平山の顔が上がり、まじまじと野崎を見つめた。浮かんでいるのは、紛れもない驚愕だ。

「こんなことが可能なんですか」

 問うた平山にこたえる代わりに、野崎は説明を続ける。

「次のページをご覧ください。詳しくご説明申し上げます」

 慌ててページを繰った平山は、そこに描かれたスキーム図を見て、低く唸った。

「まさに、奇襲作戦だな」

 感嘆を聞き流した野崎は、それから小一時間もかけて提案の内容を説明し、平山と妻による、時にシロウト丸出しの質問にも辛抱強くこたえた。