平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年3月末まで

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「そうだったんですか」

 平山は妻と顔を見合わせた。「いままでの印象では、そんなふうには思えませんでしたけどね」

「実際、レスポンスが遅いとおっしゃっていたじゃないですか」と野崎。

「たしかに」

 平山はふと、何事か考え込んだ。「ただ、気になることもいってましたよ。どうして、銀行がウチの買収案件を知ったのかと。私が御行に話したのかときいてきました」

 野崎が身じろぎし、伊佐山をそっと窺う。

「それで、なんとおこたえになったんです、社長」伊佐山は尋ねた。

「私が話したわけじゃないと否定しておきました」

 平山は続けた。「しかし、東京セントラル証券も耳が早い」

「油断のならない連中です。まあ、それはいいとして──」

 伊佐山はさっさと話題を戻した。「それで社長、今回のスキーム、いつご決裁いただけますか」
「いまこの場で決裁させていただきます」

 ワンマン社長らしいひと言だが、「取締役会の決議を経なくても大丈夫ですか」、と野崎は慎重なところを見せた。

「取締役会?」

 平山は鼻で笑った。「あんなものは形式に過ぎませんから。文句はいわせない」

3

「きいたか、三木さんのこと。総務グループに配属になったらしいぜ」
 週末、仕事の後仲間内で繰り出した飲み会の席上、尾西は声を潜めた。

「誰にきいたんですか」

 乾杯した後の生ビールの泡を拭いながら、森山は目を見開いた。

「銀行の知り合い」

 尾西は、ひひ、という意地の悪い笑いを洩らした。「ざまあみろ」

「意味、わかんないなあ」

 首を傾げた森山に、全員の視線が集まった。「だって、証券営業部から請われて本部に戻ったわけでしょ。それがなんで総務グループなんですか。そんな仕事をさせるために、わざわざ証券子会社から引き抜かなくても、代役ならいくらでもいるでしょうに」