参入障壁が高いと寡占になりやすいのはなぜか

 では、どのような業界が寡占になりやすいのだろうか。様々な要因があるが、なかでもベインが注目したのが、先ほどの条件2の逆、すなわち「参入障壁」である。業界に参入する障壁(コスト)が高ければ、既存企業は超過利潤を占有できる(※3)。参入障壁には、規制など制度的なものも含まれる。例えば、日本では銀行などの認可事業は安定して収益性が高くなりがちだ。そして、この制度要因に加えてSCPで重視されるのが、「規模の経済」(economies of scale)いわゆる「スケールメリット」だ。

 規模の経済で特徴づけられる産業は、生産量が増えるほど平均費用が下がる。図表4がそのイメージだ。この業界では、つくればつくるほどコスト競争力が増すので、大規模企業ほど超過利潤を得やすい。すると、それを求めて、他業界の企業やスタートアップ企業がこの産業への参入を検討するはずだ。しかし、この産業で既存企業と競争するには、同じ低水準の平均費用を実現する大規模生産(図表4のQm以上の生産量)をいっきに達成しなければならない。それは大きな費用・リスクを伴うから、合理的な他企業やスタートアップ企業はなかなか参入に踏み切れない。したがって、規模の経済が強く働く産業は、実質的に参入障壁が高く、独占・寡占に近づくのである。

「ポーターの競争戦略」を理解すればフェイスブックの強さがわかる(図表4)拡大画像表示

 例えば大規模な固定費が必要な業界では、この効果が顕著なことが知られている。固定費が大きい場合、生産量を大幅に増やさないと平均費用が十分に下がらないからだ。したがって石油化学などの装置産業は、一般に参入障壁が高い。新薬一つつくるのに平均200億円のR&D費用が必要とされる製薬業も、参入は難しい。図表1に示したように、米国の製薬業は利益率が安定して高いが、それにはこの構造的背景がある。

「ポーターの競争戦略」を理解すればフェイスブックの強さがわかる(図表1)拡大画像表示

 このように経済学のSCPは、完全競争の条件2(=参入コストがゼロ)の「逆条件」に着目している。参入障壁が高い業界ほど(=条件2の逆)、既存企業が価格支配力を持てるので(=条件1の逆)、安定して超過利潤を得られるのだ。