平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年3月末まで

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「じゃあ、誰かにやらせますんで。急ぎですか」

「当たり前だろ」

 日々極度のストレスにさらされているせいか、毛塚はケンカ腰だ。「誰かにやらせるんじゃなくて、お前がやれよ」

「私が?」

 聞き返した三木に、毛塚は見下した口調になる。

「他の人間は忙しいんだ。ちょうどいいじゃないか。お前、仕事まだないだろ」

 毛塚の表情に滲んでいるのは、明らかな敵意、ないしは悪意だ。

「おい、仲下、渡しておけ」

 成り行きを見守っていた若手に命じると、こんなことに構って時間を損したとばかり、毛塚は再びデスクの書類に取りかかる。

「じゃあこれ、お願いします」

 分厚い書類の束を突き付けられ、三木はすごすごと自席に引き返すしかなかった。

「滝沢さん。これ、急ぎでコピー頼む」

 忙しく立ち働いているベテランの女子行員に声をかけ、抱えてきた書類を渡すと、一瞬だけ嫌そうな顔をしたように見えたが、滝沢は黙ってそれを受け取った。

「あのさ、できるだけ、そういうの断ってくれないかな」

 直属の上司である次長の川北が迷惑そうに注意してきたのは、そのときだ。

「しかし、大量コピーは総務でやることになっていると毛塚次長からきいたものですから」

 思わず反論した三木だったが、

「それが大量のコピーかよ」

 そう指摘され、言葉を失った。「せいぜい、二、三百枚だろ。そんなのまで総務でやってたら、こっちは人手がいくらあっても足りやしない。そのくらい、自分で判断してくれないと困るよ」