平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年6月末まで

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 ライン、つまり営業の前線に行きたいという意味だ。伊佐山は自分の靴の先を見下ろし、それからエレベーターの階数表示を見上げる。

「君じゃ無理だろ」

 やがて、出てきたのは、にべもない返事であった。

「でも約束と違いますし──」

「とりあえず、銀行に戻してやったじゃないか。約束通り証券営業部だ」

 伊佐山にとって煩わしいだけの話なのだろう、ぞんざいな態度だった。

「しかし、総務では希望と違います。営業部隊に入れていただけませんか」

「君、自分にそれだけのスキルがあると思ってるのか」

 ぐさりとくる評価が、ためらいもなく出てきた。「一応、打診してみたが、君の引き取り手がなくてな。要するにそういうことだから」

 納得できなかった。

 エレベーターが到着すると、伊佐山はさっさと乗り込んでいく。

 ひとり取り残されたエレベーターホールに、落胆と失望が渦巻いた。

4

「電脳に対する支援、承認されたらしい。千五百億だ」

 その電話は十一月最初の月曜日、渡真利からかかってきた。

「すんなり決まったのか」

 ふと気になって半沢はきいた。

「いや、案の定、揉めたらしい。中野渡頭取が渋ったという話はきいた」

「スジ論にうるさいからな、中野渡さんは」

 なぜ、支援することになったのか、なぜ支援する必要があるのか、なぜウチでなければならないのか──。与信リスクを背負う以前に、中野渡謙が気にするのはいつも足元を見据えた議論であった。それだけでなく、百戦錬磨の中野渡には独特の嗅覚がある。

「とはいえ、いまさら話を白紙に戻せともいえないか」

 半沢はいった。アドバイザー契約はすでに締結済みで、その時点で、巨額融資を半ば容認したようなものだ。そのとき、

「中野渡さんは、スキームにも難色を示したそうだ」

 意外なことを、渡真利はいった。「それでいいのかと」